このレビューはネタバレを含みます
クリント・イーストウッド監督『硫黄島2部作』の1作目
太平洋戦争最大の戦闘であったと言われる「硫黄島の戦い」を日米両側から描く——とされているが、結論は微妙。
本作はアメリカの戦争参加への複雑な事情が垣間見られる。ドイツ、イギリス、ソ連と大国が次々と参戦する中で最後に参加したアメリカは「皆の衆の国」とも呼ばれ、大統領が決定しても国民の支持がなければ何事も進まない事情を持つ国家だ。
それだから卑怯な不意打ちで真珠湾攻撃を仕掛けた事でアメリカ国民は怒りに達し参戦を支持する事に傾いた(真珠湾攻撃は、アメリカを引き込むためチャーチルが仕組んだ陰謀説まである)
本作でも戦争のコストに悩まされ、硫黄島で摺鉢山に掲げた星条旗が「象徴的」に映り、戦争資金集め格好のシンボルとして政府に振り回される若い兵士達の苦しみや葛藤が描かれている。
現在でも当時を知るアメリカ人はこの「星条旗を掲げる兵士たち」の写真を印象強く記憶しているが、その舞台裏はきれいごとではなかった——というトーンだろうか。その意味で問題定義を抱える作品になっている。