ジミーT

007/消されたライセンスのジミーTのレビュー・感想・評価

007/消されたライセンス(1989年製作の映画)
5.0
もし私が配給会社の社員だったらこの映画は

「そんなに人間が好きになったのか007」

という宣伝文句で公開し、大ヒットさせたでしょう。
なぜならこれは「007ドクターノオ」もしくは「007は殺しの番号」から始まる007シリーズの「最終回」だからなんです。

公開時に観た時は、私が単純に期待した007と違っていたせいか、何か物足りなく、フツーのアクション映画だなという失望感がありました。しかし今般再見して、「これは最終回なんだ」と思い至り、感慨深く観終えた次第です。

ジェームズ・ボンドは盟友の復讐のために任務を無視した行動に出ます。上司Mはボンドの出張先まで来て警告する。しかしMはゾフィーと違って、「命をふたつ持ってくる」なんて親切なことはしません。殺人許可証・殺しの番号を剥奪し、拳銃を返却するよう迫ります。しかしボンドはそれを振り切って復讐に走る。
ここからは「普通の男の子」となったジェームズ・ボンドが活躍する「普通のアクション映画」というか「ランボーな映画」として展開してゆきます。つまりは昔観て物足りないと感じた部分、ちょっと失望した部分こそが、この映画の魅力だったんですね。そう考えるとこの映画は大変よくできていると思います。

だからこそ、この映画のラストシーンは、闘いが終わり、全てを失って英国に帰った一般人・ジェームズ・ボンドが、宵闇迫るロンドンの雑踏に消えてゆく後姿で終わってほしかった。「ウルトラセブン」の「盗まれたウルトラアイ」のラストのように。そうなればスコア10.0は確実でした。

追伸1
これまでメイン・ライターだった脚本家リチャード・メイボーム老も本作を最後にいずこともなく消えて行きました。

追伸2
もし私が配給会社の社員だったら、ピアース・ブロスナンで蘇った時の邦題は迷わず「帰ってきた007」として大ヒットさせたでしょう。

参考資料

洋泉社MOOK 別冊映画秘宝
「危機一発スパイ映画読本」
2014年 (株)洋泉社
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