福福吉吉

闇の狩人の福福吉吉のレビュー・感想・評価

闇の狩人(1979年製作の映画)
3.5
江戸時代、十代将軍・徳川家治の治世において老中・田沼意次により賄賂政治がまかり通っていた。その頃の江戸では金で殺しを請け負う「闇の狩人」という殺し屋集団が暗躍していた。闇の狩人の集団同士が縄張り争いする中、元締めの五名清右衛門(仲代達矢)は浪人の谷川弥太郎(原田芳雄)を手下に加える。弥太郎は過去の記憶を失っている中、オサキという女性とともに暮らしていたが、縄張り争いの渦の中に巻き込まれる。

前半は闇の狩人の組織同士の争いが描かれ、五名清右衛門を中心に裏切りで人がドンドン死んでいく展開になっており、分かりやすいと思います。一方、後半になると谷川弥太郎とその過去が複雑に絡み、幕府勢力の正体が掴みづらく、理解が難しかったです。

五名清右衛門は闇の狩人の元締めで対抗勢力を次々と殺していきながら、谷川弥太郎に親身になったり、オリハ(いしだあゆみ)の身を案じたりと良い人っぽさがあり、いまひとつ心情のつかめない人物でした。集団の首領として部下から信頼されており、人格者なのかなあと思いながら「でも人殺しだよなあ」というところに戻ってくるのでよく分かりません。

谷川弥太郎は過去の記憶を失っていますが、弥太郎本人は過去の記憶を取り戻す気はなく、現状のままを望んでいてオサキと小さく暮らしたい人物でした。彼にとって過去の記憶がノイズになっていて過去のフラッシュバックに苦しむ姿が印象的でした。

本作の剣劇はいわゆる「チャンバラ」ではなく、短刀や包丁などでグサグサ刺す痛々しいものになっていて、現実味があって良かったと思います。もちろん刀同士の斬り合いもありますが、本作では少ないので逆に印象的でした。弥太郎が障子を突き破りながら敵集団に突っ込み、短刀で斬って刺してを繰り返すシーンがえぐいと思いました。

血の匂うようなシーンが多く、裏切りと愛情の狭間で揺れ動く人たちのドラマを描いた作品であり、なかなか面白かったと思います。

鑑賞日:2023年2月19日
鑑賞方法:BS日テレ
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