眼鏡の錬金術師

グラン・トリノの眼鏡の錬金術師のネタバレレビュー・内容・結末

グラン・トリノ(2008年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

妻に先立たれた頑固なおじいさんウォルトが主人公。
彼は堅物故に家族とうまくコミュニケーションが取れず、兵士の頃の殺しを悔いていて、身体は病気に蝕まれていた。
表面的には頑固だが、根は寂しいおじいさん。

これがいつの時代のアメリカを描いているのか分からないが、情勢としてはアジア人や黒人の半グレ集団が跋扈している街であるようだ。警察機能が十分ではないのか。
隣に越してきたアジア人一家のことも当初は毛嫌いしていたウォルトだが、1人の娘スーとその弟タオ少年と不器用ながらも交流を果たしていく。

タオを気に入ったウォルトはタオに仕事を与え、一人前の男にするために手助けする。しかし、半グレ集団のちょっかいにまで手を出してしまい、報復としてスーが暴行を受けてしまう。
ここが命の使いどころだと決め、単身丸腰でカチコミ、蜂の巣にされウォルトは死亡。遅すぎるが、これによって警察が介入することに。ウォルトの方が一枚上手だったという結末。
ラスト、愛車グラントリノはタオへ贈られた。

まさにヒューマンドラマの教科書のような作品だ。悪いところが見当たらない。
ウォルトはおじいさんということもあり、ばりばりの差別主義者ではあるが、段々とタオとの関係が深まっていくのが気持ちよく表現されている。
床屋のロールプレイシーンが特に良かった。
読後感はなんとも言えない切ない気持ちで満たされる。
てか治安悪すぎやろ。こういうの見たり、歴史を学ぶと現代日本に生まれて良かったなといつも思う。
おれが他の時代や他の国のように警察機能や法治力の弱い社会で生まれてたらすぐに殺される側の人間だろうと思う。