ジミーT

儀式のジミーTのレビュー・感想・評価

儀式(1971年製作の映画)
5.0
今、この映画を観てみるとイヤでも思い出してしまう映画があるんです。すでに複数の方が触れていますが、市川崑監督「犬神家の一族」(76年)。
重厚なセットや旧家の様子、複雑な人間関係。独裁的家長はあちらが犬神佐兵衛なら、こちらは桜田一臣。それぞれ三國連太郎、佐藤慶という怪人が演じている。そしてあちらが派手な殺人事件なら、こちらにもミステリアスな要素があったりして、いや、どうしても思い出しちゃいますよ。

犬神家の人たちも、普段はこんな生活してたんだろうかと想いを馳せてしまうんですが、この両家には決定的な違いがある。それは言うまでもなく、金田一耕助が登場するかしないかです。

犬神家には金田一耕助が登場しました。金田一耕助は最後の最後に真相を解明し、事実を明らかにする。犬神家の窓という窓を、雨戸という雨戸を開け、澱んだ空気の換気をしたのです。信州の清浄な空気が流れ込む。
もし金田一耕助がいなかったら、犬神家の一族はこの映画の桜田家と同じ末路を辿っていたかもしれません。
逆に、もし桜田家に金田一耕助が登場していたら。澱んだ空気が換気され、救いがもたらされ、近代化の道を歩むことができていたのかもしれません。
金田一耕助のいない「犬神家の一族」がどうなるのか。そんなことを考えさせてくれる貴重な映画体験でした。

追伸1
ナニ?大島渚作品を娯楽推理映画なんかと一緒するなって?今どきそんなこと言ってるから女にモテないのだよ。
だいいち、この映画の脚本に参加している佐々木守はミステリーファンで横溝正史作品にも造詣が深く、未見だけど「犬神家の一族」を原作にしたテレビドラマの脚本を、この映画と同時期に書いている!(ウィキペディアより)

追伸2
テレビで古谷一行が金田一耕助を演じた「横溝正史シリーズ」最初期の「本陣殺人事件」で、一柳家の家長一柳賢蔵を演じていたのが佐藤慶だったのは偶然ではないと思います。
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