T太郎

シカゴのT太郎のレビュー・感想・評価

シカゴ(2002年製作の映画)
4.0
995
久しぶりに鑑賞。
今やミュージカル映画の名作と言っても過言ではない。
大好きな映画だ。

ハリウッドのミュージカルらしい、煌びやかで明るい雰囲気が素晴らしい。
フレッド・アステアやジーン・ケリーの頃のミュージカル映画を彷彿とさせる絢爛豪華ぶりだ。

ただ、登場人物の造形は全く異なる。
主要な3人は善人ではないのだ。
小ずるいゲス人間なのである。
そこがまた面白い。

物語の舞台は禁酒法時代辺りのシカゴだ。
アル・カポネとか酒の密売といった文言がちょいちょい出てくるので、多分そうなのだろう。

主人公はロキシー(レニー・ゼルウィガー)というショービズの世界に憧れている女だ。
結婚しているが、浮気をしている。

うむ、ゲスいね。
日本では、これはゲスいのだ。
かつてはゲス不倫などと言われて、もてはやされたものだ。

そんなロキシーは、不倫相手を射殺して刑務所に収監されてしまう。
しかも、一旦は夫に罪を被ってもらおうとしたりするのだ。
夫がアホな事を利用して。

そんな女なのである。

収監された刑務所でロキシーは、ヴェルマ(キャサリン・ゼタ・ジョーンズ)と出会う。

ヴェルマはかつて、ショービジネスの世界で名を馳せたスターだった。
ロキシー憧れの人だったのだ。
彼女も殺人の罪で収監されていたのである。

ここで二人の友情が育まれ・・・・
などという話ではない。
ロキシーもそうだが、ヴェルマも相当性格が悪いのだ。

二人はけなし合い、罵り合い、足を引っ張り合い、醜い争いに明け暮れる。

実は二人の罪はまだ確定していない。
裁判はこれからなのだ。
ロキシーは死刑を恐れている。
なんとしてでも無罪を勝ち取りたい。
こうなったら、敏腕弁護士を雇うしかない。

ここで登場するのが、ビリー(リチャード・ギア)という、無敗の凄腕弁護士だ。
彼はヴェルマの弁護を担当していたのだが、あっさりロキシーに乗りかえる。

ロキシーの弁護をした方が、自分のキャリアにプラスとなる、という計算からだ。

かように、全く好感の持てない登場人物たちが繰り広げる、煌びやかなミュージカル映画なのである。

ちなみに、唯一好感が持てるのは、ロキシーのアホな夫(ジョン・C・ライリー)だ。

ミュージカル場面は、そんな彼らが歌い、踊る。
現実場面とリンクさせながら、比喩的表現として映し出されるのだ。

現実場面は刑務所や裁判所と地味で暗い場所だが、そこに呼応するミュージカル場面は実に華々しいのである。
見応えもバッチリなのだ。

「ダンサー・イン・ザ・ダーク」を思い出す方もおられるかもしれないが、こちらはコメディだ。
全く気負いなく鑑賞できるので、安心してご鑑賞いただきたい。

キャサリン・ゼタ・ジョーンズがセクシーなのは、至極当たり前である。
私がハンサムであるのと同じくらい、周知の事実と言えよう。

しかし、レニー・ゼルウィガーのこの役どころは、意外性があり良かった。
イメージどおりのコメディエンヌぶりは、きっちり発揮してくれているが、ダンスシーンが実にセクシーなのである。
スタイルもいいし、ダンスのキレも素晴らしいのだ。

「ブリジッド・ジョーンズ・・」や最近の彼女しかご存じない方は、是非ともこの作品を観ていただきたい。
レニー・ゼルウィガーの新たな一面を見出すこと請け合いなのである。

そして、断言するが、彼女の魅力に気づいたあなたは、思わずこうつぶやくに違いないのだ。

レニー、結婚して・・・と。
T太郎

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