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階段通りの人々のmareのレビュー・感想・評価

階段通りの人々(1994年製作の映画)
3.5
オリヴェイラ風のエッジの効いた不条理劇なのは確かであるが、その殺伐さから逃れるようなペーソスに留まっていて、さらには遊びや余白を与えている独特な雰囲気がある。階段通りのワンシチュエーションで、人物に特に寄り添うこともないが、ドキュメントな視点でどこか冷徹とは言い難い絶妙な距離感。狭い近所付き合いの中で一人の盲目の老人をめぐって、周囲の意地の悪い関心がスケールを肥大化させる恐ろしさ。無関心ゆえに家庭内ですら誰も協力的な味方はいないという袋小路。映画というよりも舞台というニュアンスに近しい。こちらが余韻に浸る間もなく、突然ファンタジーを爆発させる描写があって油断できない。
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