T太郎

潜水服は蝶の夢を見るのT太郎のレビュー・感想・評価

潜水服は蝶の夢を見る(2007年製作の映画)
3.6
982
フランス映画だ。
静かなヒューマンドラマである。

脳梗塞で倒れ、全身麻痺になってしまった男性が主人公だ。
彼が動かせるのは左目だけ。

舌も口も動かせないので、当然声も出せないのだが、心の中では饒舌にもの言っている。
そんな主人公ジャン=ドーの心の声をナレーションに物語は進んでいく。

まずはジャン=ドーが目覚める場面からだ。
この時、彼はまだ自分の置かれた状況を分かっていない。
喋れない事も動けない事も。

まあ、時を置かず彼はちゃんと状況を理解するのだが、なんせあの状態だ。
リアクションの取りようがない。
左目だけでは如何ともしがたいのだ。
精神的ショックたるや相当なものだったと思うが、受け入れるしかないのである。

そんな彼に二人の療法士がつく。
理学療法士と言語の療法士だ。
非常に献身的にジャン=ドーに向き合う素晴らしい人たちだ。
しかも、妙齢の美女ときている。

彼女たちに対するジャン=ドーの初見の心の声がこれだ。

「ここは天国か」

だが、誤解してもらっては困る。
彼女たちは真のプロフェッショナルなのである。
お色気を前面に打ち出したお色気ガールではないのだ。

彼女たちの献身的な療法により、ジャン=ドーは左目一本で外部とのコミュニケーションが可能になったのだ。

ジャン=ドーはかねてから構想していた小説の執筆を始める。
これは病に倒れる前から計画していた事なのだ。

だが、左目だけで一体どうやって?

ここは是非とも本作を観て、ご確認いただきたい。
とにかく、気の遠くなるような作業の積み重ねなのだ。

いわゆる難病物なのだが、不思議と悲壮感がない。
しかも、ハッピーエンドではないのだ。

そう考えると不思議な作品なのだが、決して難解な物語ではない。
非常にストレートに響いてくるヒューマンドラマだと言えよう。
難病物ながら、泣かせにきていないところも好感が持てる。

色々考えさせられる作品だった。
自分が同じ状況になったら・・・
しばし想像してみたのだが、とても耐えられるとは思えない。
それをリアルに感じられる作りになっている。
考えられた演出だ。

とにかく、健康には十分気をつけましょうね。
T太郎

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