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或る剣豪の生涯のjamのレビュー・感想・評価

或る剣豪の生涯(1959年製作の映画)
3.7
見た目はとても素敵だけれど、中身が伴わない
難ありの見た目に反して、心が素晴らしい

あなたならどちらを選択しますか?

ひとときの恋の相手
ずいぶん失礼だけど、人に自慢するため
そんな状況だとしたら、見目麗しい方をセレクトするのもありかも

けれども、長い時を一緒に過ごすとか
人生の伴侶としてなら、心根の美しさが容姿を凌駕するのではないかしら?


頭脳明晰、優れた剣術の腕を持ち、弱き者への思いやりの心に溢れた駒木
その大きな鼻故に色恋とは無縁

憎からず想っている千夜姫
同じく彼女に心奪われた十郎太
"おちいさま"千夜の心を知った駒木は
二人の仲を取り持つことに…

何故なら、容姿端麗の十郎太は意中の人を前にして
「好きで好きでたまらない」としか言えず
"英知と才気のある人"を理想とする彼女を射止めるには駒木の力が必要だから


夜闇に紛れて
影武者の如く愛の言葉を語り

二人が赴いた戦地から沢山の恋文を送る


これはまさに"シラノ"

三船敏郎が大きな付け鼻で不器量で無骨な男…珍しい役どころだけれど
宝田明の演ずる優男の美男子とのバランスがなかなか

話の筋立ても舞台を戦国時代の日本に置き換えてはいるものの
シラノそのもの

戦地から一人戻り
失意の千夜姫を慰める為に長年通い続け

いよいよ
千夜姫が十郎太亡き後、心の支えにしてきた愛の便りを
月の光が翳っても
誦じてみせる駒木

漸く真実に気づいた彼女に

醜さ故に戯けた一生を過ごす自分
貴女はわしをしあわせにしてくれた
かわることなく接してくれた
わしの喜びだった


月の世界に一人旅だ
たつたひとつの想いをだいて
それはわしの心意気だ


人は見た目じゃない、という普遍的なテーマを三船の力技の熱演が思い出させてくれる
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