T太郎

ROOM-H6のT太郎のレビュー・感想・評価

ROOM-H6(2005年製作の映画)
3.1
1011
スペイン発のサイコ・ホラーだ。
あまりの評価の低さに私は少々怯んだものである。
これだけ低いのも珍しい。
低評価には低評価なりの理由があるものなのだ。

一瞬、観るのをやめようかと思ったのだが、私は持ち前のガッツで果敢にチャレンジしたのである。

要は自宅である元ホテルの一室で、18人もの人たちを惨殺するサイコキラーの物語である。

言うほど悪くなかった。
かなりの低予算作品である事は伺えるのだが、中盤過ぎくらいまでは、割りと丁寧に作られている印象だ。

一人目の娼婦のくだりは、かなり詳しく描かれていて、主人公のサディスティック具合が遺憾なく発揮されているのだ。
直接的なグロ表現もここだけである。
非常に力が入っている事が伺える。

主人公の淡々とした独白をバックに、繰り広げられるグロシーン。
素晴らしい演出だ。

二人目の娼婦のくだりは、ややトーンダウンだ。
まあ、仕方ないだろう。
全員を同じようには描けない。

この辺までは「ホステル」などを彷彿とさせていただき見応えがあった。

惨殺した娼婦らの肉を素知らぬ顔で調理し、愛妻にふるまっている場面なども実にエグくて良かったのだ。

だが、警察が介入してきた辺りから、物語が急激にスピードアップし、とんとん拍子にラストへと収束していった感があるのである。

だから、最後まで私は主人公が殺害したのは4人だけだと思っていた。
いつの間に18人も殺したのだ。
そんな描写はこれっぽっちも無かったではないか。

例えば「パヒューム」では、その辺を上手にダイジェストでお届けしていた。
あのような演出はできなかったのであろうか。

できなかったのだろう。
多分、ご予算が尽きたのだ。
ない袖は振れないのだ。
手弁当でエキストラを雇うとかも無理だったのか。

最終的に主人公が、非常に切れ者で天才肌の犯罪者のように描かれていたのだが、これには違和感しかない。
いつの間にそんなに賢くなったのだ。
冒頭の彼とのギャップが凄すぎる。

ただ、ラストの妻とのやり取りはしゃれていて良かった。
「なぜ、わたしだけ殺さなかったの?」
「僕は家族は殺さないよ」
離婚直後のセリフである。
恐ろしくも小粋なラストシーンだと言えよう。

まあ、色々あげつらったが、私は十分楽しめた。
巷の評価ほど酷いとは思わなかったのだ。
もっと酷い作品は山ほどあるのである。

血飛沫が飛び散るシーンがある。
非常にエグいシーンなのだが、私はそこで「カメラを止めるな」のある場面を思い出したのだ。

すると一連のグロ場面が、なぜかホッコリ心暖まるものに見えてきたのであった。
(言い過ぎ)
T太郎

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