アーモンドフィッシュ

ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド ゾンビの誕生のアーモンドフィッシュのレビュー・感想・評価

4.3
ゾンビ映画の金字塔、サメ映画で言うところの「ジョーズ」に当たる作品。

鈍くて知能がない、人肉を食べる、噛まれた方もゾンビになる、倒すには脳を破壊しなければならない、など現在あるゾンビのフォーマットがこの映画ですべて完成されています。

ホラー映画のお決まりもこの映画で誕生したと言っても良いのではないでしょうか?ゾンビに追いかけられるとコケる、電話が繋がらない、(やめれば良いのに)二手に分かれる…etc. これどっかで観たことあるぞ!というパターンがてんこ盛りです。

驚いたのは主人公のベンが黒人ということ。製作された1968年といえばキング牧師が暗殺された年でシドニー・ポワチエが活躍してた時代とほぼ同じです。ポワチエは白人が理想とする人畜無害で従順な黒人像を演じていたのに対し、「ナイト~」のベンは声を荒げたり命令したり時には手を挙げることもある白人からしたら生意気な黒人を演じています。ですがこれが白人だったら普通によく出てくるキャラクターなのです。当時は黒人が白人に命令したり、ましてや暴力を振るうなど例え映画でもあり得ない時代ですから相当批判されたことは想像に難くないです。

ゾンビが思ったより速かったり見た目も普通だったり現在のゾンビ像とは多少違っていて、まだまだディテールは試行錯誤中なのだと分かります。ストーリーもゾンビに襲われる事よりも極限状態に置かれた人間がどのような行動を取るかを中心に描かれているのも興味深かったです。

知らない人はいないほどの怪物「ゾンビ」を作り上げ、後世に模倣作品がたくさん撮られ「ゾンビ映画」というジャンルを確立させたという所が「ジョーズ」と非常に似ている所だと思います。

そして衝撃的なラスト。当時はアメリカン・ニューシネマの時代なので、このようなラストはまぁよくあることです。パニック映画定番のプロットは「ジョーズ」以降完成すると言ってもいいでしょう。

ホラー映画だと敬遠せずに是非色んな人に観てほしい作品です。