1010
再鑑賞
このところ、暗く陰鬱な作品が多かったので、何かホッコリできるものを・・・
という事で選んだ作品が、これだ。
聖杯とも言われる極上のスコッチウイスキーを巡る、ハートフル・クライム・コメディである。
タイトルの“天使の分け前”には、ちゃんとした意味がある。
蒸留所で樽詰めされたウイスキーは、年間2%ほど空気中に蒸発しているという。
人はそれを“天使の分け前”と呼ぶそうな。
なんと粋なニックネームであろうか。
だったら、その2%分を俺たちがいただいてもいいぢゃないか。
要はそんな物語だ。
主人公のロビーは非常に暴力的な青年だ。
何回も警察のご厄介になっている。
それどころか、刑務所に服役していた事もある。
ロビーには恋人がいて、その恋人は妊娠している。
こんな生活からは早く抜け出したい。
親子3人で普通に暮らしたいと思っているのだ。
しかし、環境がそれを許さない。
暴力的な輩が周りにはウジャウジャいるのだ。
彼は性懲りもなく暴力事件を引き起こし、裁判で社会奉仕活動の裁定を受ける。
序盤30分くらいは非常に重苦しい展開を含む。
え、ホンマにコメディ?
誰もがそう思うだろう。
しかし、ご安心あれ。
きっちりコメディなのだ。
笑えてホッコリできるのである。
その社会奉仕活動でロビーは様々な出会いを果たす。
その一人が、世話役というか監督者というか、奉仕作業を束ねるハリーという男だ。
このハリーが意外なほどいい人で、ロビーはひとかたならぬお世話になるのだ。
そして、そのハリーを通じてロビーは、ウイスキーのテイスティングの才能に目覚めるのである。
ロビーは真っ当な仕事に就き、妻子と平和に暮らしたいと願っている。
だが、そのためには環境を変える必要がある。
それには金が必要だ。
さて、ここで最前触れた“聖杯”と“天使の分け前”である。
ロビーは一計を案じ、奉仕作業仲間とともに、とあるウイスキーの蒸留所へと向かうのであった。
結局は犯罪を犯す訳なのだが、着地が素晴らしくいい。
それに、誰も傷つけていないし、損をさせた訳でもないのだ。
ちょっとぐらい、いいぢゃないか。
ケチケチすんなよ。
そんな物語だ。
3人の仲間たちが憎めなくて良いキャラクターである。
非常にいい。
彼らも社会奉仕活動を命ぜられた犯罪者なのだが、どこか可愛らしいのだ。
更に、ロビーの恋人が素晴らしくよくできた女性である。
彼女がそばに居れば、ロビーは大丈夫だろうと思わせてくれる人物だ。
先ほど紹介したハリーを含め、善き人たちと出会ったロビーの未来は明るい。
そう思える作品であった。
作中、ロビーたちがウイスキーの蒸留所を見学する場面があったが、私も以前、京都のサントリーのビール工場や兵庫県の酒蔵の見学をした事がある。
蒸留酒、醸造酒の違いはあれど、雰囲気はとても似ていて、繊細なお酒作りの過程は実に興味深いものがあったのである。
その感想を要約すると・・
とても面白かったです、だ。
(小学生か)