T太郎

鑑定士と顔のない依頼人のT太郎のレビュー・感想・評価

鑑定士と顔のない依頼人(2013年製作の映画)
4.1
891

再鑑賞
ミステリー映画だ。
事件や探偵や警察など一切出てこないが、れっきとしたミステリー映画である。

主演はジェフリー・ラッシュだ。
老いらくの恋に溺れる愚かなおっさんを見事に演じている。

ヴァージル(ジェフリー・ラッシュ)は美術品の鑑定士だ。
仕事は一流だが、私生活はなんだが寂しそうである。
広い邸宅に一人で暮らしているのだ。

後々明らかになるのだが、なんとチェリー君らしい。
態度は尊大で偉そうだが、チェリー君なのである。

そんな彼の元にある女性から美術品の査定の依頼が。
クレアという若い女性だ。
両親が残した膨大な遺品の価値を査定し、カタログを作成して欲しいという。

ヴァージルは早速仕事を始めるのだが、依頼人のクレアとはなかなか会えない。

電話でのやり取りが続く。
ヴァージルは彼女の事が気になって仕方ない。

たがそれでも尚、のらりくらり言を左右にして彼女は姿を現さない。
ヴァージルの想いは募るばかりだ。

そんなもどかしいやり取りを重ねていくうちに、ついにクレアが姿を現す。

私のような声だけ美人ではない。
(あんた、おっさんですやん)
見た目も実に麗しい、妙齢の美女だったのである。
ヴァージルは完全に恋に落ちる。

しかし、彼女はこの屋敷から10年以上出た事がないという。
広場恐怖症だと言うのだ。

人との接触を極度に恐れ、存命の頃の両親とも一切顔を合わせる事なく過ごしていたらしい。

なるほど、クレアのヴァージルへの失礼な対応にはそういう理由があったのか。

彼はクレアを外の世界に連れ出したいが、なかなか上手くいかない。

そんなある日、ヴァージルが暴漢に襲われ重症を負ってしまう。
それを見たクレアは躊躇する事なくヴァージルに駆け寄り、涙ながらに助けを求めたのだ。

やがて二人は愛し合うように・・・

   以下ネタバレ
 いや、ネタバレをするつもりは
 さらさらないのだが、私のつた
 ない文章表現が、物語の本質を
 ほのめかしてしまうような気が
 して、敢えて注意喚起をさせて
 いただいた次第である。

 でも、本作をまだ観た事ないよ
 ~って人は、読んじゃダメだよ。
 絶対の絶対だよ。
 約束だよ。
 (ネタバレする気満々ですやん)

ヴァージルはすっかりクレアに夢中になり、自身の貴重な秘密のコレクションの数々を彼女に見せる。
彼はクレアとの将来を夢見て有頂天だ。

ある日、帰宅するとコレクションともどもクレアが消えていた。

・・・オーマイガー!

これはキツい。
そんな物語である。

もう一度言おう。
これはキツい。

実は重要な登場人物があと二人いる。
そこまで明かしてしまうと、
「お前は浜村淳か」
と言われてしまいそうなので、止めておこう。
(それはそれで光栄だが)

ヴァージルはおっさんだ。
金だけは持っている。
性格も容姿も決して若い女性に好かれるような人物ではない。

チェリー君は見事に罠にはまったのだ。
実にお気の毒である。

その点、同じおっさんだが私は大丈夫だ。
私は人の本質を見抜く目、心眼を持っているからである。

馬鹿にしてはいけない。
私は無様に騙されるような失態は犯さないのだ。
世の悪女たちからの挑戦をお待ちしている。

・・半年後、身ぐるみ剥がされ路頭を彷徨う○太郎の姿がそこかしこで散見されたのであった。

       完
T太郎

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