T太郎

ショート・タームのT太郎のレビュー・感想・評価

ショート・ターム(2013年製作の映画)
4.2
969
“ショートターム”という保護施設が舞台のヒューマンドラマだ。

その施設には、孤児や親と離れて暮らさざるを得ない子どもたちが入所している。
何歳から入れる施設なのかは分からないが、みんな中高生くらいに見える。
多感で難しいお年頃だ。

そこで働くグレイスという女性が主人公である。
まだ若いが、非情に熱心に子どもたちの面倒をみており、しかも有能だ。
ベテラン職員のような風格さえ漂っている。

同僚のメイソンとは恋愛関係にあるのだが、職場ではそんな事はおくびにも出さない。
きっちり線引きができていて好感が持てる。

そんな彼女は、子どもたちに真正面から向き合い、寄り添い、共に笑い、共に泣き、共に背負い、共に抱き・・・
そんな日々を・・送っている。
全く尊敬に値する熱心さなのである。

登場する子どもたちは様々な問題を抱えている。
私であれば、はだしで逃げ出すような、もしくは尻尾を巻いて逃げ出すような案件の数々。

グレイスはそれらに果敢に向き合うのだ。
共に笑い、共に泣き、共に迷い、共に願いながら・・・

だが、この作品の特異な点はここからだ。
立派な大人が未熟な若者を教え導くという、金八仕様にはなっていないのだ。

実はグレイス自身も子どもたちに負けず劣らず、重い問題を抱えていたのである。

終盤は非情に不穏な雰囲気に陥り、私たちをドキドキさせる展開がある。
大丈夫か、グレイス!
早まるな、グレイス!

しかし、そんな彼女を救ったのはある問題児なのだ。
その問題児のある言葉にグレイスは救われたのである。

よくできた物語だ。
非情に面白かった。
低予算でも、ここまで心を打つ作品が作れるのだ。

誤解なきよう申し上げておくが、決して暗くて重い作品ではない。
ラストシーンのお陰もあるが、非情に心温まる、気持ちのいい作品なのである。

鑑賞後にこのジャケット写真を見ると、なぜか微笑ましい気持ちになる。
初見では全く違う印象を持つであろう、このジャケット写真がだ。

この場面をジャケ写に採用したエラい人に、是非ともジャケ写オブザイヤーを進呈したいと思った次第である。
T太郎

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