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ドイツ発のサスペンス・ミステリーだ。
タイトルどおり“検屍官”が主人公である。
検屍官とは?
他殺体などを検視、解剖して、捜査に資する様々なデータを公式初見として発出する人。
・・知らんけど。
それっぽく定義付けしてみた。
まあ、そんな人だ。
物語は若い女性の他殺体が発見された場面から始まる。
そこに颯爽と臨場する女性検屍官ヘレン。
私好みの短髪の美女だ。
(その情報はいらん)
彼女は眉ひとつ動かさず死体を検視し、冷徹に司法解剖を実施していく。
優秀な検屍官である事が伺える。
さて、冒頭死体で発見された女性だが、実は女性ではなかった。
性転換手術を受けた元男性だったのだ。
ここでまず一驚きだ。
作中、彼女は全く動かない。
完全なる死体役だ。
どう見ても女性にしか見えないのだ。
オッ○イとかに見とれていたら、まさかのヘレンの宣言。
むむむ・・
なんか複雑な気分だ。
だが、物語上そうなのだから仕方ない。
謹んで受け入れるとしよう。
とりあえず、ありがとうとだけ伝えておきたい。
しかし、こんな事は序の口だ。
この後、更に驚きの事実が繰り出されていくのだ。
かなり早いうちに繰り出された衝撃の疑惑。
父と女性化した息子との近親相姦!
何ですと!
こんなの聞いた事がない。
頭の中を何周ひねくり回したら、こんな事を思いつくのだろう。
物語はこの殺人事件を中心に展開される。
犯人は一体誰なのか。
フーダニット物のミステリーなのである。
その点、容疑者候補が多数用意されているのは良い。
犯人が誰なのか、考える楽しさを味わえると言えよう。
まあ、私はすぐに分かったのだが。
実は主人公のヘレンは浮気をしている。
夫にもばれていて、夫婦間にはすきま風が吹いている状態なのだが・・。
果たしてこのエピソードはいるのか?
事件との関連性は皆無で、妙に浮いている印象なのだ。
ある女性刑事が恋人からプロポーズされる場面もそうだ。
あれは一体なんだったのだろう。
ちょっと理解に苦しむ挿話である。
物語に深みを持たせるつもりだったのだろうか。
だとしたら成功しているとは言いがたい。
ただひたすら、唐突感や違和感しか感じなかったのだ。
事件捜査一本に絞った方が良かったと言えよう。
真犯人は一体誰なのか。
その犯行動機はなんなのか。
ドキドキしながら、事件の顛末を追っていただきたい。
ミステリーとして十分楽しめるだろう。
まあ、私はすぐ分かったのだが。