イチロヲ

愛獣 赤い唇のイチロヲのレビュー・感想・評価

愛獣 赤い唇(1981年製作の映画)
3.5
刑期を終えて繁華街に戻ってきた元コールガールの女性(泉じゅん)が、奇しくも旧友たちの屈折した色恋沙汰に取り込まれてしまう。ヤクザが跋扈する世界からの脱出不能状態を描いている、日活ロマンポルノ。

本作の泉じゅんは、自らの娼婦性により人間関係をかき乱してしまうことを自覚している、ある意味スケープゴートともいえる立ち位置。自分自身の存在意義を考えあぐねており、また無知蒙昧な男たちを俯瞰して眺めている。

出所した泉じゅんが、5年ぶりに自分の街へと戻ってくる冒頭部。浦島太郎状態で、旧友たちの人間模様を眺めていく展開が面白い。堅気になった元ヤクザと元娼婦がカップリングされていて、一見では幸せそうなのだけど、やっぱりどこかでズレている。

ダウナー系の作風に終始一貫しているため、ポジティブ志向の高揚感を楽しむことはできない。一方、ノースリーブ姿の泉じゅんは、あいかわらず香気芬芬としており、「Let it go!」(流れに沿って進むしかない!)する女性の説得力に秀でている。
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