A8

ブラック・スワンのA8のレビュー・感想・評価

ブラック・スワン(2010年製作の映画)
3.9
小学校の時に、何回もCMやその他広告で見かけたイメージが強く、いままで見てはなかったがよく覚えている作品。

ナタリーポートマンが、“身体を張っている”といったイメージがあったのだが、
この作品を観てみて
“精神を張っている”、、?
といった印象を抱いた。

役柄に心が奪われていく姿。
ただ単に役に入り込みすぎがどうとかじゃなくて、実際の主人公の生活(セクハラ、危ない仲間、抑圧母、、)が心を取り乱す要因となることを十分理解できるのでよりリアルに感じるのである。


とある名門バレエ劇団で世代交代が行われていた。
主人公は、真面目で完璧主義、だが失敗を恐れるあまり自分の色を出せない性格であった。それは恐らく幼少期から過保護な母やバレエの熾烈な環境がその性格を作り出したのかもしれない、、
ある日、彼女は新たなプリマとして抜擢される。彼女が初めて演じる役は白鳥🦢
「魔物によって白鳥の姿にされた少女。その魔力を解くには恋の力が必要。その相手、王子がいたのだが彼女(白鳥)と瓜二つの黒鳥は彼女を嘲笑うかのように王子を誘惑していく、、
そして、ついに絶望の末に彼女は自殺してしまう。」といった内容。

本来あった白い部分が黒いモノに囚われていってしまうといったモノなのだが、
実際の彼女も“白いモノ”は持ち合わせている。
だが、“黒いモノ”はない、つまり爆発的な自分の感情というものがないのだ。

いままで自分の“白いモノ”だけを表にして生きていきた彼女。
母の抑圧、バレエでのプレッシャー、役への依存、、そんな彼女に追い討ちおかけるように彼女が持ち合わせていない全てを持っている新人バレリーナが現れる。
それが白色を黒色にを返していくきっかけとなっていく。

だんだんと、この役柄とリンクしていくように、自分にある“黒いモノ”黒鳥が姿を現し、、ついに彼女を囚えるのであった。
見事に役柄と現実の彼女がリンクしていく描き方は説得力があり素晴らしかった。
自己の敵は自己にあり、、なのだろう。



見えないモノが見え始める
本当はないモノ、本当はいままであったが見ないようにしていたモノ、気づかなかったモノ、、彼女が抑えてきた黒い塊のようなものが、ついに白い白鳥である主人公を乗っ取ったのである。
最後のシーンはそれを“作品とリンク”させるというカタチで描かれるクライマックス。
役での彼女は死んでしまった。
実際の彼女“白鳥”も、、死んでしまっただろうか、、

彼女の心が囚われたとき、
元の彼女はもういない。
ニンゲンコワイ、でももっと自己の囚われとはもっと恐ろしい。
A8

A8