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聖なる鹿殺し キリング・オブ・ア・セイクリッド・ディアの映画好き交流CINEPARAのレビュー・感想・評価

4.3
【Séaのレビュー】


4.3
2020/06/16 07:43
🍝🍝🍝

"今に最悪の時間が来る。ついに始まったんだ"

 Zoom感想会の課題になった(というかこれは僕が推した)ので改めて3度目の鑑賞!
 皆の感想が見事にバラバラで面白い!Zoomが楽しみです。

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【STORY】
 美しい妻子に恵まれ医者としても成功中のスティーヴンは、父親を失った少年マーティンにも優しく接していた。
 しかし、過去のある出来事のせいで、順調な彼の人生は狂い始める…

 彼を狙うのは神の制裁か。悪魔の試練か。それとも人間の呪いか…


【現実的な神話】
 淡々と展開する物語、"そうなるのが当然"とばかりに起こる不可解な現象、人々のリアクションの希薄さ。
 それらはランティモス監督作品には付き物ですが、今作は他の作品よりも現実要素が濃い分、そういった違和感を強めに感じますよね!

 神話や聖書も、上記のような特徴があると思います。理由・原理じゃなくて、"こうなるからこうなる" だけだし、登場人物もそれに大きな疑問を持つことはありません。

 そういった形式を現代の人間のドラマに当てはめると、こうも違和感・不快感が溢れて独特の雰囲気になるんですね…。
 その違和感や現実離れした現実描写を楽しめるタイプかどうか好みが分かれそうな作品ですね。


【整然とした違和感の世界】
 捉え方によっては規則正しき正義の制裁とも考えられ、しかし手法は悪魔のトライアルのようでもあり、根本は人間の憎悪にあるようにも見える。
 何にせよ起こることはめちゃくちゃなのに、どこか整然とした雰囲気が常にあるのが魅力です。

 整った構図、不安定なようでめちゃくちゃ不協和音というわけではない音楽。

 そして "彼" も自分から何かする事はなく、ただちょっとした "ズレ" をもたらしていくだけです。

 何かを大きな力で破壊するような要素は内容的にも演出的にもないのに、ちょっとした1つ1つの歪みが全ての破壊に繋がっていく。

 その壮大な化学反応のような作風が本当に好きです…


【無駄に醜い】
 生への執着や性への関心は、人間・生き物であれば当然のもの。
 でもこの作品の作り上げた違和感の上では、そういった当然の物も、"醜く這いずる悪しきもの" に見えてしまう…

 ランティモス監督はやっぱりすごいし好きだなぁ