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ファースト・キルのysmsのレビュー・感想・評価

ファースト・キル(2017年製作の映画)
4.0
ヘイデン・クリステンセンが主演でブルース・ウィリスが出てるんだけどそれ目当てで見るとかなり内容がうっすいサスペンス映画になる。

これはリーヴァイ(銀行強盗犯)とダニー(息子)の友情の物語だ。
映画の冒頭がトンネルを這っていくリーヴァイで始まり、タイトルの次に入るシーンが子供が学校で殴られてるところ。これがもう象徴的でしょう。

序盤で黒幕も丸分かりだし、強盗と汚職警官が共謀してる事件だって分かってるのにあんな怪しい誘導尋問受けてて違和感を覚えない父親はバカなのかな?みたいな。虐められてる子供を何とかしようと鹿狩りに連れ出すとかいうズレ具合がもうね…子供と全然向き合えてない。正直イライラしてきてこいつじゃなくて強盗犯のリーヴァイを主役にした方が面白いんじゃ?って大半が思う気がする。

しかしこの映画、リーヴァイ&ダニー目線に変えて見るとかなりの傑作になる。主演じゃないからダニーと打ち解けていくリーヴァイの死亡フラグがどんどん立っていくたびにハラハラしてしまうし、こんなにイイ奴なのに死ぬなァァアァ…!って胸がキリキリして切ない。父親があんなに無能でなければ!!くそぅ!

よく映画あるあるで、たいてい子供が余計な事をしでかして窮地に陥ってしまい観客が苛々するっていうのがあるんだけど、それは登場人物の大人が子供を完全に『面倒なお荷物』として扱っているからなんだと分かった。何が起こっているのか説明せずに「車で待っていろ、動くな」とか「いいからここで静かにしていろ」とか子供でなくても訳分からない事を押し付けられてきけるわけないんだよな。

リーヴァイはダニーという子供が投げかけてくる質問に全て優しく正直にきちんと答えている。これは凄い事で目からウロコが落ちた気分だった。分からない事は「分からない」と正直に、答えにくい事は「大人の事情ってやつ」と笑いながら、その『大人の事情』というものの正体が何なのかという例えも子供に提示してくれる。
秀逸なのが虐めっ子に対応する際の助言。無能な父親に比べてなんと金言を授ける事か、正直感動した。しかも「100回のうち99回はうまくいく」っていうのが最高で「1回は失敗するの?」っていうダニーの問いかけに、そういう事もあるっていう人生を象徴した含蓄付き。「失敗したら全力で殴るか逃げろ。恥ずかしい事じゃない」って素晴らしいよ。
そして真正面からダニーの目を見て「巻き込んですまない」って真摯に謝る姿。ほんとお前いい父親になれるぜリーヴァイ。彼といるとダニーもくだらない子供のワガママとか言わないところがいいんだよ、お荷物扱いじゃなくてちゃんと一人前として扱ってもらうと子供だってちゃんと出来る。そんな疑似親子にほんわかしているうちに無能な父親(一応主人公)の所為で事態は最悪の展開に。

ダニーとその父親を逃がす為に必死覚悟の単身で警官の前に囮で出ていくリーヴァイのカッコ良さよ。最後もダニーを助ける為に瀕死なのに立ち上がって…これ、父(疑似)の姿としてこれ以上ないシビアコじゃあないですか。
ラストで車に乗ったダニーが泥棒の人形をお気に入りにして遊ぶんだけど、コレ冒頭で自分がヒーロー役で痛めつけてた泥棒人形なんだよね。完全にリーヴァイに重ねちゃってるし、しかも服のコーディネートを人形に寄せてる。エモいなぁ…。

マイナス1なのはリーヴァイ側は何も救われずに終わってしまったのが悲しすぎるので。生きてて欲しかったなぁ…父親があんなに無能でなければ!!くそぅ!(2回目)

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