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ALONE アローンのVeloのレビュー・感想・評価

ALONE アローン(2016年製作の映画)
3.0
紛争地帯で任務に失敗した兵士は味方部隊と合流するために砂漠を歩き続けることになる。

合流地点の村まではかなり遠い。
一歩、二歩、ひたすらに歩く。
水がなくなってきた。食糧もわずか。村まで到達さえできればなんとかなるはずだ。そう信じてひたすらに歩くしかない。
一歩、二歩、カチッ…


……


砂漠で地雷の上に足を乗せてしまった兵士。
もう決してその足を動かすことはできない。詰み。

かろうじて繋がった無線から救助部隊が到着するのは57時間後と告げられる。
あるのはわずかな水と非常食、他にあるのはライフルと絶望と…あと絶望。

さて、どうする?

───────────

設定としてはこんな感じ。
以下、ざっくりのブロックごとの感想。



▼前半は現実に迫るいくつかの脅威をどうサバイブするか、主人公の心身のタフさが描かれる。
→映画だからといって超人的な解決方法が出てくるわけでもない。前半はいわば絶望を抑え直すための確認ブロック。本当にどうしようもない状況で、本当に過酷な状況でることを印象付けている。

▼片足固定で砂漠にしゃがみ続けるのは想像を絶する苦しみが蓄積する。
やがて兵士の心身は限界を超え、救助部隊を待つその時間は自省と錯乱を繰り返す無限の時となる。
→たしかに、この状況は肉体もさることながら精神ゲーだろう。いっそ自分で銃で頭をぶち抜いて死んでしまいたい、いや死ぬぐらいなら足を動かしてみるか?どちらの選択をする勇気もない。主人公の兵士は勇気がないのだ。もとはといえば、スナイパーである主人公が暗殺命令の標的を撃たなかったことが今の状況を招いている。勇気がないからこうなっている。とはいえ、我々が彼の勇気の無さを非難することはできない。誰もそんなことできないし、彼が直面しているのはそれほど恐ろしい戦地での出来事だから。


▼精神崩壊寸前の兵士は己と向き合う。
回想か幻想か?数々のトラウマや後悔がフラッシュバックする。
→ここでも彼の人生において、一歩踏み出す勇気がなかった出来事が描かれる。
DVの父親に何もできなかったこと、何もできないまま母親の最期を迎えてしまったこと。彼の人生は一歩踏み出す勇気がなかった。
ただ、恋人を守るためなら相手が強かろうと5人だろうと殴りかかる。そこでは勇気を出せたらしい。
しかし、結婚となると一歩が踏み出せなかった。恋人にプロポーズできぬまま戦地に来てしまった。絶望の最中、想いを馳せることしかできない。
ほぉーん、恋人を守る喧嘩では勇気が出せて、結婚は勇気が出ないんだ。ほぉーん、それがどう今回の物語で作用するのかな?と思ってたら特にどうということはないように思われた。まぁいっか。守るために喧嘩したから超絶美人と付き合えたんだもんね。生きて帰れたならプロポーズするぐらい楽勝だと思うからフラれないことを祈ります。

▼道中で爆死したはずの相棒が目の前に現れて話しかけてくる。
→ダニエルラドクリフの「スイスアーミーメン」を思い出した。無人島かなんかで死んでゾンビになった友達と2人で脱出しようとする映画。ゾンビになったハリーポッターの上に乗ってゾンビポッターの屁の勢いで海を渡ろうとする映画だった気がする。

▼トラウマや公開と向き合う兵士の回想(精神崩壊もあいまってほぼ幻想)は「ITそれが見えたら終わり」を彷彿とさせた。
→ITでは子どもはピエロに出会うと自分が強く恐れを抱いているものを脳に浮かべてしまいその恐怖に勝てないとピエロにやられるみたいな感じだったっけ?
子どもには子どもの恐怖があり、それはファンタジーではあるけど些細ではなく重大な恐怖で、トラウマを克服できるかどうかが命運を分ける。
今回のは大人版、等身大のトラウマにじわじわと向き合う。



▼この辺の設定や描きたいテーマはよかったし、途中までは興味深く見られた。
ただ、中盤以降の脚本と、オチというかトリックというか結末がなんかすっきりしなかった。

途中までスーパータフネスで耐えまくったのはすごいし、終盤もラリってたけど持ち直してウルトラファインプレーで切り抜けたじゃん。
なのに、そもそもおっちょこちょいやんけ。勇気とかじゃなくミスじゃね?っていう平和ボケした一般人からの指摘。申し訳ないけどそこが気になる。

地雷踏んだかも?ってなってクソほどビビるのはしょうがない。わかる。全然わかんないけどビビるのはわかる。
でも、そこで我々なら恐怖で失神して力が抜けて爆散してしまうところを、あなたはしっかり意識を保って靴の下の砂にナイフを刺して地雷っぽい固いものが当たるのを確認してたじゃないですか。
そこまでできるんだったらもうちょっと周りの砂地を掘ってみて本当に地雷なのかどうか確かめてみてほしかったですよ。
めっちゃつらそうだっただけに最初にそれを確認して早く解放されて欲しかったです。なんで確認しなかったんですか、無線で周りを掘るとかそれっぽいこと言われてたけど聞こえなかったです?聞こえなかったならしょうがないけど、なんか座学で地雷からの脱出方法を習ったっぽいことも言ってませんでしたっけ。


【まとめ】
▼トラウマに苛まれるとか、実は地雷踏んでなかったってオチはぜんぜんアリだし、むしろその方が面白いと思うんだけど、それでもしっくりくる脚本状のトリックを用意しておいてほしかった。
最後の最後の戦闘はかっこよかったからオッケー。

▼ポスターのキャッチコピーに「一歩踏み出して死ぬか、そのまま死ぬか」みたいなことが書いてあった。一歩踏み出す勇気があるか?というような問われ方だけど、一歩踏み出さないでおく勇気も存在すると思う。
現に、自分が地雷源にいるとわかってから一歩踏み出していたはずなので、その一歩がなければこんな苦しい展開になっていないし。
「やらない後悔よりやる後悔」とは限らないのである。
深く考えずに一歩踏み出したせいで、その後何日間ももう一歩を踏み出すかどうかで苦闘し続けた男の話。



▼「コレ面白そう!観た?どうだった?」って友達に聞かれて勧めるかどうかで言うと悩みどころ。

「やべ、地雷踏んだかも…ってなったらお前ならどうする?」
この返答に「まず本当に地雷なのかどうか確認するよね」って冷静に答える友達には勧めないでおこう。
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