ポンポコ

ジョーカーのポンポコのネタバレレビュー・内容・結末

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

ストーリー

精神障害を患いながら懸命に生きる主人公アーサー。
職場でもプライベートでも他者からバカにされ辛い境遇です。
挙句に国からの補助金も打ち切られてしまいます。
しかしそんな彼にもささやかな楽しみと二つの夢がありました。
楽しみとは、マレーという男性がMCを務めるトーク番組を見ること。
そして夢は、コメディアンとして有名になることと、この番組にゲストとして出演することです。
そのためにアーサーはバーのステージを借りてネタ見せの練習などもしています。

ある時、アーサーは職場の同僚から拳銃を預かってほしいと渡されます。
その日の帰り道、アーサーが電車に乗って帰宅しているとベロベロに酔っ払った会社員3人に難癖をつけられ絡まれます。
徐々に会社員の絡み方はエスカレートし、最終的に殴る蹴るの暴力にまで発展します。
必死に抵抗するアーサーは反射的に預かっていた拳銃で会社員の一人を撃ちます。
そこでタガが外れたのかもう一人、そして最後の一人。
三人の会社員を撃ち殺したアーサーは動揺しますが、自然と口元には笑みが浮かびます。

帰宅したアーサーがニュースを見ると三人の会社員が殺されたことがニュースで報道されています。
大手の社員で人柄も良く殺されるような人ではないと語られています。
目撃者もいないようです。
安心していると携帯に着信があります。
なんと電話の主はマレーの番組の関係者からです。
バーでのネタ見せをたまたま見ていたテレビ関係者が興味を持ってくれたようで是非番組にゲストで出てみないかと打診を受けます。
二つ返事でアーサーは了承します。

放送当日アーサーがテレビ局に到着するとスタッフから番組の説明を受けます。
生放送であること、街の有名人を紹介する番組のワンコーナーでの出演であることを。
そして最後にテレビに出る際には芸名を使えるがなんと呼んで欲しいかと尋ねます。
それにアーサーは「ジョーカー」と答えるのでした。

番組が始まりとうとうアーサーの出番です。
意気揚々と登場するアーサーですが、放送中に会社員を殺したことを語り始めます。
当然マレーからは非難され、自首するように言われます。
しかし、アーサーは続けます。
あんな奴らを殺して何が悪いのかと。
弱者を虐げて楽しむ奴らがいるんだからそれを殺して楽しむ奴がいても構わないだろうと。
楽しい楽しくないは主観であり、自分は殺しが楽しい。君らだって弱者の自分を虐げて笑ってきたじゃないかと。
この番組も障害を持ったつまらないコメディアン志望の自分を笑い物にするために呼んだんだろうと。
最低な人間を殺して何が悪いのだと。
捲し立てます。
ただマレーには響きません。
怒ったアーサーはマレーを拳銃で撃ち殺します。
そして、そんな映像が全世界に生放送で届けられたのです。

これによって町中はパニックに陥ります。
今まで虐げられてきた弱者と言われる人々が暴徒と化して暴れ始めたのです。
ジョーカーは弱者が強者に抵抗するシンボルになった瞬間でした。


感想
抽象的で分かりづらい演出が多く、現実と妄想の境目が不透明なため難しい映画に感じそうですが伝えたいメッセージとしてはかなりシンプルで
「弱者による強者への反抗」
だと感じました。

善良で真面目にも関わらず障害などが理由で周りから蔑まれ国からも補助を切られたどん底の主人公。
そんな彼がひょんなことで拳銃という力を手にして強者に抵抗する。
絶対に抵抗しないはずの弱者の抵抗です。
強者たちはお前は狂っているおかしいと騒ぎ立てます。
しかし、本当に狂っているのはどちらなんでしょうか?あれだけの仕打ちをして反抗したら狂ってる。
そういった強者と弱者の関係に一石を投じる作品に感じました。
特に最後の場面で、笑うアーサーにカウンセラーが何がおかしいのかと尋ねる一幕。
質問に対してアーサーは一言「理解できないさ」
弱者である彼の面白いと思えることを強者側であるカウンセラーは理解できないだろうと、弱者の事なんて知ろうともしないくせに分かるわけないだろうと言われているようでした。
こうした映画だからこそそれを見て共感した社会的弱者が犯罪を起こさないかと危惧されたんだと思います。

また、悪のカリスマと呼ばれるジョーカーですが映画を見た感想は悪ではなく、弱者のカリスマなのではないかと思いました。
彼は映画上で善良として描かれているキャラは殺していないんですよね。
(職場で唯一親身に接していた同僚は殺人現場を見られながらも見逃しています)
ただの猟奇殺人鬼ではなく、自分に明確な敵意を見せる強者のみを殺しています。
ある種の大義名分を持って殺しを行う彼だからこそ最終盤で弱者たちからカリスマとして祭り上げられたように感じました。

ちなみに昨今ジョーカーに触発され無差別に人を襲う犯罪が散見しますが全くナンセンスですね。
上記の通りジョーカーとは、弱者が理不尽な強者に抵抗する作品です。
もしジョーカーの模倣犯罪をするなら汚職まみれの政治家やパワハラ上等のブラック企業社長などの理不尽に弱者を搾取する強者を襲うでしょう。
無差別に電車で人を傷つけるようなことは今作のジョーカーが1番しない犯罪な気がします。
別作品のジョーカーならしそうですが、、、