ポンポコ

RUN/ランのポンポコのネタバレレビュー・内容・結末

RUN/ラン(2020年製作の映画)
4.4

このレビューはネタバレを含みます

・簡易的なストーリー
主人公のクロエは先天性の病気により車椅子生活をしている。
母との二人暮らしで大学入試を終え、現在は合否を待ちながら過ごしている。
病気のため毎日母から用意された薬を飲むクロエだが、ある日見慣れない新しい薬を渡される。
その薬について調べたところ、なんと動物用のもので人間が飲むと足の痺れや歩行困難を起こすと判明。
自身の病気の原因が母の渡す薬のせいだと分かり、他にも何かあるかと調べると実は自分が赤ん坊の時に母だと思っていた女性に誘拐されていたこと、大学の合格通知も隠されていたことが明らかになる。
今まで母親だと思っていた女性は赤の他人の誘拐犯であり、病で苦しむ原因すらその女性のせいだと知ったクロエは必死の抵抗の末なんとか彼女から逃れることに成功。
母親だと思っていた女性は過去に、クロエが生まれた病院で同じタイミングで子供を産んでいた。
しかし、彼女の子供は先天性の病気により出産後、間もなく亡くなっていた。
そんな時に彼女の目に入ったのは我が子と同じ時、同じ場所で生まれた幼いクロエであり誘拐の理由だったのだ。
7年後、まだ薬の後遺症に苦しみつつも幸せに過ごすクロエは母だった女性が収容されている警察病院に向かう。
「お薬の時間だよ」そう呟く彼女の手には幼い頃に飲まされてきたあの薬があった。

・感想
登場人物は母親と娘がメインで他数名がちょい役で出る程度と少なめですが場面転換も多く、90分の中でサクサク進むためだれることなく見ることができました。

主人公が下半身不随の上、喘息を持っており行動に著しい制限があります。
そのため逃げる場面や急がなければいけない状況での緊張感や緊迫感はかなりのものでした。
ホラーではないので驚かし要素はないですがハラハラする場面の連続でそこもよかったです。

健康だったクロエを誘拐したにも関わらず薬で病弱にして家に閉じ込めるのは外界と遮断して誘拐したことを世間に知られないようにしているのかと思いきや、周辺の住人はクロエの顔や名前を認識しておりチグハグさを感じたのだが、実は母親の本当の子供は既に亡くなっており現在のクロエの病状に似通った先天性の病を患っていたことを知ると本来生きるはずだった我が子と同じ状態にしてより重ね合わせてみていたとも考えられ、彼女の異常性と母性の暴走のようなものを考えさせられた。
彼女はクロエを通して本当の我が子をみており、クロエ自身は見えていない、見ようとしていない、だからこそクロエ自身の苦しみに気付けなくなっていたように感じた。

悪いところを強いて言うと、ストーリーは一通り綺麗にまとまっていたが細かい部分の粗探しをし始めると「新しい薬は毒っぽいけど元々の薬は安全だったのか」「戸籍などはどうなっているのか」などあります。
ホラーやスリラーにこうした粗探しはナンセンスかと思いますが完璧なストーリーを求める方にはお勧めできないかもしれません。

自分としてはド派手な演出も大きなどんでん返しもありませんが、起承転結のまとまった手堅いストーリーと小気味良い演出のいい映画でした。