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ウディ・アレン監督作品。
ロンドンが舞台のミステリーだ。
最近、ウディ・アレン作品をちょいちょい観ている。
以前は数年に1本のペースだったのだが、このところかなり頻度が上がってきているのだ。
私も大人になったという事であろう。
主人公はクリスという元プロテニス選手だ。
彼は私と同じでハンサムなだけが取り柄の男である。
お金持ちのお嬢様クロエに気に入られたのを機に、どんどんのし上がっていく。
クロエと結婚し、彼女の父親が経営する会社で出世していくのだ。
しかし、クリスは私と同じでハンサムな男だ。
モテるのである。
彼は浮気に走る。
お相手はノラというセクシーなアメリカ人美女だ。
クリスはノラに夢中になるのだ。
前半はクリスとノラの恋愛模様が非常に細やかに描かれる。
後半、あんな事になるなど考えられない甘酸っぱい展開だ。
一向に事件が起こる気配がないので、ウディ・アレンらしい恋愛にまつわる悲喜劇が淡々と描かれていくのかと思って観ていた。
しかし、コメディ要素は全くない。
重いトーンで物語は進んでいくのだ。
とすれば、やはり何か事件が起こるのか。
などと考えながら、アホみたいな顔して観ていたら、中盤以降何やら不穏な雰囲気に。
次第に追いつめられていくクリス。
にっちもさっちもな状況に陥っていく。
自業自得の極みなので同情はできないが、まあお気の毒ではある。
人生のマッチポイントという訳だ。
最終的にクリスが下した決断とは?
題材自体は非常にありふれたものである。
同じような状況に陥った男の物語は、映画やドラマや小説などで死ぬほど描かれている。
あまりにありふれた題材だったので、逆に展開が読めなかったくらいである。
ミステリーと言ったが、これは倒叙物だ。
犯人側の犯行の様子やトリックなどを事前につまびらかにして、それがわずかなミスにより破綻していくという種類のミステリーである。
捜査の手がジワジワと主人公に迫ってくる焦燥感や緊張感を楽しめるのだ。
この作品も題材こそありふれているが、非常に緊迫感がありドキドキできる、いい作品だった。
ウディ・アレンらしいユーモアは、最終場面近くでいきなり出てくる。
倒叙物の筋を崩す、意表を突いたラストだ。
これはこれで、皮肉が効いていて面白いと思った次第である。