しずる

パラサイト 半地下の家族のしずるのレビュー・感想・評価

パラサイト 半地下の家族(2019年製作の映画)
4.0
下町の半地下に暮らす失業者家族と、高台のお屋敷に暮らす富裕層。韓国社会の経済格差への問題提起作という見方もあるようだが、それが主題かと言うと、 うーん、と首を捻ってしまう、『ジョーカー』を見た時のような感触が…。
説教臭いお題目よりは、ほーら、人間って恐いだろ、と、解り易い破滅を可視化してくる、お化け屋敷のような作品。

富裕層の世間知らずや傲慢を嘲笑い、つけ込んで寄生した家族が、もっと足下の存在に脅かされていく構図。加害者と被害者、見下す側とされる側が入れ替わりし、先の見えないスビード展開、衝撃の結末。地上と地下、高台と下町など、目に見える比喩を駆使し、色や臭いを強烈に印象付ける感覚的表現。リアルと幻想が境を無くしていくような不安感。
どれもが素晴らしく、絵・音・物語の全てで観客を揺り動かす『映画』というコンテンツとして、これが一つの理想形かもなぁという完成度の高さ。
流れる雨と共に滑り落ちるように階段を駆け下り、最下層の溢れる下水に浸った我が家で呆然と途方に暮れるシーンは、感嘆の一言。
コメディともホラーともサスペンスともヒューマンドラマとも分類し難く、笑い、泣き、ドキドキし、恐がり、感情変化さえも盛りだくさんに、あれこれと堪能できる。

一級のエンターテイメント作品なのは間違いなく、特に前半は笑い所も多く気軽に楽しめるのだが、人の弱さ、悪意、欲、傲慢、欺瞞、妬み、蔑み、暴力などの負の感情が強烈に描かれ、しかもそれが極めて感覚的に叩き付けられてくるので、思考停止で遣り過ごす事もできず、どんどん恐さや嫌悪感の方が上回って、肩に力が入り、観賞後にはぐったり疲れ切ってしまった。
恐がりさん、暴力苦手な方は少々ご注意を。
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