一人旅

イエスタデイの一人旅のレビュー・感想・評価

イエスタデイ(1979年製作の映画)
5.0
ラリー・L・ケント監督作。

1960年代のモントリオールを舞台に、フランス系女学生・ガブリエルとアメリカからの留学生で医師を目指す青年・マシューの恋を描いた青春恋愛ドラマ。

シンプルに、ガツンと泣ける傑作。恋愛映画はそれほど普段は観ないのだが、本サイトでの高評価に惹かれて鑑賞した。ちなみに本作は未DVD化の作品なので、現時点ではVHSをレンタルするしかない。

国籍の違う若い男女の恋の行方を、1960年代の国際情勢を絡めて描く。ふとしたことがきっかけで出会うマシューとガブリエル。すぐに二人は恋に落ちるが、やがてベトナム戦争が二人を離ればなれにしていく...という“戦争に翻弄される男女の恋”をテーマにした王道的な内容だが、変にストーリーを複雑にせず、一本筋の通ったシンプルで分かりやすい脚本が鑑賞者の感情をこれでもかと揺さぶってくれる。

マシューと祖父の会話を通じて戦争に対する向き合い方の違いが鮮明になる。「戦争に行きたくない」と訴えるマシューに対し、祖父は「祖国のために迷わず行くべきだ」と語気を荒げて話す。「命よりも祖国が大事なの?」というマシューの問いに対し、少し考えた後「そうだ...」と小さな声で返す祖父の表情が印象に残る。旧世代と新世代で祖国・戦争に対する考え方や生き方に違いが見られるが、孫息子と祖父の間の世代を越えた愛情は、考え方の違いによる両者の対立とは無関係に成立する。最後に「お前が何をしようと、私はいつも味方だよ」という祖父の言葉に、孫に対する深い愛情が込められている。何よりも、愛が優先されるのだ。

終盤のクライマックスは泣きっぱなし。くさい演出が嫌いな人は冷めた目で見てしまうかもしれないが、それはもったいない。若い男女の恋にとどまらず、両者の家族とその歴史をも巻き込み膨れ上がっていくさまざまなかたちの愛。若い男女の愛、子に対する親の愛、孫息子に対する祖父の愛、そして、新しいかたちとなって現れた愛に導かれるようにして、ちりぢりになり失われた過去の愛がふたたび収束していく。

そして、主題歌がこれまたいい。感傷的なメロディが自然に涙を誘う。どうやら本作の主題歌は2バージョン存在するようで、今回鑑賞したバージョンにはニュートンファミリーの「スマイルアゲイン」ではない方の曲(曲名は不明)が挿入されていた。
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