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ドント・ルック・アップのdaisukeookaのレビュー・感想・評価

ドント・ルック・アップ(2021年製作の映画)
4.2
物語のテンポの速さが見事。滅亡がやってくるまでに半年。万全の準備をするには短く、絶望してヤケになり再発見するには充分な「半年」という時間。トランプ&コロナに合わせ「ポピュリズムでええんかほんまに」と世に問うコメディ大作。これをササッと作って出して来るNetflixはやっぱりスゴい。

メリル・ストリープに大統領をやらせるとか、その大統領がスモーカーであることをカムアウトして支持を伸ばすとか「SNS大衆ってそう動くよね」というツボが的確。

座して滅びを迎える物語はいくつか観た・読んだことはあるし、どれにも似たような自棄の描写がある。けれど、主人公の科学者レオ様とジェニーの二人が迎えた結末には救いがあって、それこそがこの物語の良心だろうと思った。何もかも笑い話にして流そうとするテレビショーのMC達を押し切って科学者は真実を叫ぶ。そうしてもしなくても滅ぶことは変わりないのに。明日世界が滅びようと樹を植える人たちで、この世界が支えられている。

そしてそんな人たちを置いて逃げた権力者たちは、そんな人たちに守られていたことを忘れていたわけで、「最期」はよく描けてる。

これを日本を舞台にして描くとどうなるだろうと思って観ていた。きっと政権が頑張って救うのは選挙に行く高齢者たちばっかで、気がついたら現役世代から下は滅んでしまっているんだろう。映画を観終わった後に、よりひどい現実が忍び寄ってる感じもする。映画は現実の鏡でもあって、そんな「映画の仕事」をこの映画は果たしている。
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