daisukeooka

翔んで埼玉 ~琵琶湖より愛をこめて~のdaisukeookaのネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

前作未見だったけど・妻が滋賀県出身・自分も神戸市出身の関西夫婦、ということで、前作を配信でしっかり勉強してから観に行った。映画のアラは出身地へのシンパシーでだいぶ目隠しされていると思う。

個人的には「神戸市長=藤原紀香」が一番ハマっていたっつーか好きだった。同年代であるにも関わらず、就活~新社会人くらいのころに持っていた彼女への憧れは、今でもしっかりあるし、依然その憧れを裏切らない美しさと、年月を経た人間の厚みがあって、眼福にもほどがある。港町を象徴する錨のマークが「ティファニーで朝食を」のオードリー・ヘプバーンを意識した黒のドレスの胸元に入っていて、視線は必然的にそこに寄るのだ。

そして「大阪府知事・嘉祥寺晃=片岡愛之助」という、リアル出身地も一致した上での夫婦共演。これがこの映画への個人的な関心を高めたことは間違いない。両方とも好きなんだよなー。愛さまの顔芸と舞を存分に堪能できる。どんなに台詞が弾けても、あの顔と動作があるから破綻せずキマる。カットによっては愛さまを中心に「世界が成立する」のだ。

さらに、麻美麗(GACKT)と桔梗魁(杏)が山野を駆け抜ける中で一頭のロバに出くわすシーンで、隣で見ていた妻が「ぷーーーっっ」と噴き出した。滋賀県濃度が高ければ高いほど、そして滋賀県からある一定の年月離れていると、懐かしさも相まって物凄い反応が出てくるみたいだ。この反応を制作スタッフの方々に見て頂きたかった。あなた方の仕事はど真ん中をブチ抜いてますよ。

前作も含めてこの映画って、結局は「虐げられた者たちが立ち上がる革命への賛歌」という大きな矢印を外さずに突き進むから、どんなにくだらないことをやっても場面場面でスリル・悲しさ・興奮がしっかりついてくるのだ。ゲリラ豪雨の中で滋賀県水没を見下ろす美湖(堀田真由)晴樹(くっきー!)たちの場面はひたすら哀しく、この事態をどうやって覆すのか考えてもそれまでの物語の中に一切そんな要素が無いことに絶望さえ覚えるくらいだ。何百もの「とびた」たちが奮戦空しくぺしゃんこで山道に晒されている様も惨い。だからこそ大阪・京都・神戸連合軍 vs 滋賀・奈良・和歌山連合軍の戦い(つまり出身地対決)は、その密度濃度とテンポの良さで前作を凌いでいてめっちゃ上がる。やっぱり関西ってそれだけで濃いんやなと。

そして関西での戦いが遠く埼玉の結束をも生んでいく仕掛けがサイコーだ。そういえば武内監督は映画「テルマエ・ロマエ」でも古代ローマを救うために大相撲の関取たちを持ってきた。「離れたところの大きなものが、もう一方を大きく動かす」というやり口が得意なのかも知れない。単に笑わせるだけでなく「大きい」のがいい。くだらない笑えるだけの映画だと思えばさにあらず、王道のホンをベースに仕上げられた躍動感溢れるコメディ大作。「阿呆を真剣にやる」これが尊いのだ。

てな感じなんだけど、気になる点が2つ。

1つは、舞う大阪府知事を囲む「粉の民」たちが踊るダンスだ。あれ「ケチャ」に見えたが。もちろんそのままではないけど結構寄せてある。ケチャそのものは好きだけど、ふと「インドネシアやバリをディスっているように見えないか?あちらの方々には話を通しているのか?」と不安になった。あのシーンそのものは鬼気迫っててめっちゃ格好良いんだけどね。

2つめは、やはりGACKT。彼の美しさと強さが「翔んで埼玉」の映画世界の可笑しさを増幅しているんだけど、そろそろそういう役回りも一服しては、と思った。美しさ・強さ・賢さ・凶暴さを全面に出して、ストレートに格好良いGACKTをストレートに格好良い映画で観たい!なんて思ってしまったのだ。「翔んで埼玉」シリーズの次回作があるんなら、その前に一本格好良いのをやりきってほしい。
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