眼鏡の錬金術師

護られなかった者たちへの眼鏡の錬金術師のネタバレレビュー・内容・結末

護られなかった者たちへ(2021年製作の映画)
3.5

このレビューはネタバレを含みます

舞台は宮城。物語は現在の連続殺人事件と、9年前の東日本大震災当時の避難生活とを行き来する形式。

主役は刑事の笘篠と、前科持ちの利根。どちらも被災しており、この2人の視点を軸に進んでいく。

キーワードは生活保護担当のケースワーカー。
利根は被災した際にケイさんというおばあさんとカンちゃんという女の子と同居することになり、疑似家族を形成する。
時が経ち、ケイさんがひどく困窮しているにも関わらず、福祉事務所の対応があまり良くなく、結局保護開始とならずケイさん餓死。それを恨んだ人物が私刑として当時のワーカーをぶっ殺していくというのが真相。

なんか東野圭吾っぽいというか、白夜行っぽいな。
動機がちょっと弱く、そこまで福祉事務所を逆恨みするかって感じはするが、物語は制度に対する疑問も投げ掛けつつ、切ない話に仕上がっている。

私は福祉職なので、これまでもたくさんのケースワーカーと仕事をしてきたが、生活保護の担当者というのはめちゃくちゃに専門性(高齢者福祉、障害者福祉、児童福祉全て関係していく)が求められるのに、数年で異動してしまうし、福祉のことを何も知らない人が担ったりして、担当者によって当たり外れはかなりある印象を持っている。
別にケースワーカーが善人かどうかは問題じゃないと思うよ。人間なんてみんな善人であり悪人でもあるんだから。勤務時間中はちゃんと仕事してくれればそれでいい。
まぁ、現行の生活保護制度をどう感じるかは人次第かな。不正受給の問題はあるにせよ、あった方が犯罪率抑えられて良いとは思う。もっと現物支給を導入するとか、専門家を入れるとか、やるならちゃんとやって欲しいとは思うかな。

ただ今回の件にマジレスすると、本来地域の独居で問題を抱えている高齢者をまず担当するのは地域包括支援センターだ。情弱な利根やカンちゃんが自分達で生活保護申請に連れて行ってしまったのが悲劇で、本来なら包括に繋がって、そこの職員と一緒に行くことで、本人の生存のために福祉事務所と交渉もできただろうと思う。自分達でやろうとせずに福祉の専門家につながるべきだったんだよね。