大道幸之丞

TITANE/チタンの大道幸之丞のネタバレレビュー・内容・結末

TITANE/チタン(2021年製作の映画)
4.0

このレビューはネタバレを含みます

イタリアやフランスではときおり極めて奇妙で珍品の作品が登場する。

例えばマルコ・フェレーリの「I LOVE YOU(1986)」は口笛を吹くと「I LOVE YOU!」と返してくれる口元だけの玩具なのだが、それに嫉妬する男(クリストファーランバード)の物語だし、同監督の「未来は女のものである」はイタリアでは評価された「珍品」なのだが、今もなおVHSかLDでしか手に入らないのが惜しい。ともかく私はそんなのが大好きだ(笑)

さて、本作は「その手の作品」だ。覚悟を決めて観たほうがいい。
ジャンルは「ボディ・ホラー」と呼ぶらしい。

100分足らずの尺なのだが、キーワードはやはり「チタン」なのだろうか。

ともかく一切先が読めない。

幼少時交通事故により頭部にチタンプレートを埋め込んだ反抗的な少女アレクシア、やがて成人しレゲエダンサーのような仕事をしており、一部に熱狂的なファンもいる。

彼女は相手がうざくなると平気で殺してしまうし車とセックスすることもできる。何人か殺したところで指名手配になってしまう。髪を切り男性を装ったところで、10年前に息子を失踪で失っている消防士の隊長ヴァンサンが「あれは私の息子だ」と言い切り引き取り、消防士にしようとする。(後から考えれば誰でも良かったのかも)

しかしアレクシアは懐妊しており、膣からはエンジンオイルが流れ出て一部裂けた腹部からはチタンがむき出している。

胸と腹をサラシで強く巻いて男のふりをするが、隊員の1人に見抜かれてしまう、しかも指名手配であることにも気づかれる。ときおり激しい陣痛で苦しみながら消防士の訓練をしているアレクシアだが、隊員のパーティーで盛り上がって、いい雰囲気の音楽がかかると思わず体をくねらせ、プロらしくセクシーダンスに興じてしまい隊員たちが皆戸惑う。ヴァンサンもその姿を観てしまう。

その後に激しい陣痛が襲うがもう全裸でヴァンサンにすがると、それを受け入れ助産をしてくれる。生まれた子は背骨が見事なチタンに輝く赤子だった——という顛末。

あまり真剣に合理性を問うてはいけない。感じながら受け入れながら観ることをおすすめする。

——今年で40歳になろうとしている監督ジュリア・デュクルノーはすでにフランスでは前作「RAW 〜少女のめざめ〜」で一定の評価を得ており、期待の新人監督のようだ。

途中で投げ出さずに「私は新しい映画を観ているんだ」と言い聞かせて最後まで観て欲しい。今のところちょっと似た映画が思い浮かばない。