ひじり

川っぺりムコリッタのひじりのレビュー・感想・評価

川っぺりムコリッタ(2021年製作の映画)
3.6
あゝなんて愚かで愛しいわたしたち


ほぼ荒川アンダーザブリッジ。
なんなら本家実写より本質に近いまである。

前科者の山田と境界知能で苦労してきた島田。
とにかくムロツヨシの人間描写が凄まじく
役者でここまでIQを下げられるのかと驚いた。
変な人から始まってヤバい人にまでなるのに
最後それでもなんか憎めない人になるのは
本も芝居も初めてかもしれない。

多分全員ふつうの人間になれなかったコンプレックスを抱えていて、どこか弱さで繋がっていて、それでもふつうのフリをしていることに、誰も指摘しないでいてあげる。そんな世界。

お父さんの最後を語る柄本さんや
アイスを食べて好き勝手に話す満島さんに
金魚の話をする吉岡さん
徐に一言本音を吐き出すムロさんや
お骨にさよならをする松山さん

どうしようもない人たち全員それぞれに
素晴らしく美しい瞬間があって
泣けてきてしまった。


死を受け入れるということは
今ある生を受け入れることだったのかと
腑に落ちながら見つめる行進が忘れられない
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