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コーダ あいのうたのpeitoのレビュー・感想・評価

コーダ あいのうた(2021年製作の映画)
4.5
品川の映画館はほぼ満席。なのに隣の席にはコートだけ置いてあった。
予告編が始まると、そこの席にお客さんが来て私の方を見た。
私じゃないですよ、と合図をすると、反対側の方が何も言わずにコートを取って席を空けた。
「すみません」位言えよなーと思ってちょっと気分が悪くなって、睨むようにそちらを見ると、お連れの方と手だけで会話をしていた。
すみませんが「言えない」こともあるか、と思った。

映画はすごかった。決して斜に構えることなく、誰も排除することなく、全員を感動させようという気概が伝わってきた。

始めは手話「でしか」意思疎通ができない家族が、外の世界とつながり、歌や振動や笑顔や仕事で繋がることを覚えていく。つながっていく場面の1つ1つに愛を感じて、涙が出る。
妹が進学を諦めると言った時に兄が怒る場面。
父が娘に自分のためだけに歌ってもらう場面。
入学試験で、Mr.Vが駆けつけて、家族のために、はじめて身振り手振りを交えて歌うシーン。あれが彼女にしかない"something to say"。
どれもが色濃い。

学校のリサイタル、家族視点の演出があった。
ろうあの方は字幕と映像で楽しめると思ってこの映画を見に来ただろうに、この演出は気づけないんだなぁと、思った。
対して、ラストシーンは出発する娘からのハンドサイン。耳が聞こえるほとんどの人には伝わらない演出だった。

見る人によって、受け取れるものは違うけど、どっちがたくさん受け取れる、という話でもないし、受け取れたことを交換することが分かりあうということなのかな、と思った。
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