T太郎

復讐者たちのT太郎のレビュー・感想・評価

復讐者たち(2020年製作の映画)
3.8
957
ドイツ・イスラエル映画だ。

戦後のドイツを舞台とした作品だが、ナチス、ホロコーストを題材としている。
登場人物はほとんどがユダヤ人だ。
そう、彼らの復讐の物語なのだ。

「あなたの家族が殺されたと知ったらどうする。」
「罪のない家族が殺されたと知ったら」
という問いかけで物語の幕が上がる。

主人公はホロコーストを生き延びたマックスという男である。
ナチスによって無惨にも妻子を虐殺されている。

ある日、マックスはイギリス軍のユダヤ人部隊と出会う。
この部隊はナチスの残党狩りをしている。
軍人ばかりではない。
収容所で働いていたドイツ人全てが標的なのだ。

命乞いする男女を情け容赦なく断罪し、処刑していく。
正規の戦争裁判を経る事なく、彼らの判断で。

復讐心に燃えるマックスはこの残党狩りに参加する。

一方、“ナカム”というドイツのユダヤ人組織がある。
こちらは更に過激で、ナチス党員だけでなくドイツ人全てを標的にしている。

ナチスの残酷な暴挙に異を唱える事なく傍観していた者は、ナチスと同罪だ。
罪のないドイツ人などいない。
目には目を、600万人には600万人を、だ。

虐殺されたユダヤ人は約600万人と言われている。

イギリス軍ユダヤ人部隊はこのナカムを危険視している。
イスラエル建国を控えたこの時期、ユダヤ人に対する憎悪を煽るような行動は逆効果だ、と。

しかし、ナカムのユダヤ人はもろにナチスの迫害を受けてきた人たちだ。
家族や友人を殺されているのだ。

イギリスのユダヤ人とはそこが違う。
ユダヤ民族の悲願など二の次なのである。
復讐に凝り固まっているのだ。

ナカムの面々は町の水道局に潜入する。
貯水槽に毒物を流し込みドイツ人の大虐殺を目論むのだ。

一体どのような結末をむかえるのか。
マックスはこの計画にどのように関わっていくのか。

なんかエンタメ作品みたいなあらすじになってしまったが、内容は実に深刻でシビアだ。
ホロコーストに関する新たな視点を与えてくれる作品なのである。

ラストでの再度の問いかけ。
「あなたの家族が殺されたと知ったらどうする。」
「罪のない家族が殺されたと知ったら」

この独白の主体は誰なのか。
ユダヤ人なのか、ドイツ人なのか・・・
T太郎

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