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英雄の証明のtakashiのレビュー・感想・評価

英雄の証明(2021年製作の映画)
3.9
ビジネスパートナーに半分騙された形でビジネスに失敗し、借金を追ったラヒム。高利貸しの借金を代わりに返済した知り合いに対しラヒムは返済ができず、起訴され刑務所に収監されてしまった。

イランでは借金で刑務所に収監されたとき、休暇日として一時的に刑務所からでることができる。

息子や恋人のため、なんとか返済をする目処をたてて債権者の起訴をとりさげてもらい、刑務所からでようと考えるラヒム。そんななか恋人から金貨を拾ったと連絡を受け、これを返済の充てにしようとする。

ただ色々とタイミングもよくないこともあり、持ち主に返すことに決めたラヒム。
そこから思ってもみなかった事態に展開してしまう。

ラヒム自身はどこにでもいるような人物であり特段の高潔でもなく、かといって悪い人間でもない。

ちょっと欲目がでたりすることもあれば、プライドを守りたい、大切な人を守りたい、まっとうに生きたいと行動するのだけど、それを周りの人たちが良かれと思って様々な助けをしようとする。

それがかみ合わせが悪くどんどん良くない方向に行ってしまう。
誰もそこまで悪くはないけど、善意や良いことだと信じて行動することは必ずしも当事者にとってありがたいものではないということがよく分かる。

そして監督の過去作にも通じるものは最後に犠牲になるのは子どもというところ。

ラスト、結局なにも良いことがなかったラヒムだが、頭を丸めすこし晴れやかな表情で息子と恋人と別れるのは、その前に(自分で蒔いた種とはいえ)息子を守るために自分のプライドも捨てて行動したことが大きかったことが、ちょっとした救いを感じた。
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