原爆の父オッペンハイマーの半生を描いた物語。
理論物理学の天才として名を上げながらも、女好きで神経質かつ大胆、科学者たちや生徒のリーダーだけでなく、軍人や政治家とも渡り合えほどのコミュニケーション力の高さをもつオッペンハイマー
そしてときには相手の心情を組まずに失礼なことをしてしまうことも多く、物語ではそれが重大な事態を招くこととなる。
原子爆弾の開発に携わり、それが日本に投下される際の計画にも関わったオッペンハイマーは投下されたことを知ってから自責の念に苛まれることとなり、核軍縮や水爆の反対の立場を明確にとるようになる。
映画としては映像で見せるよりは登場人物たちの会話劇が多く、途中から誰か誰に対して言及しているのか追いかけるのが難しくなってしまった。
ただノーラン監督らしく時系列を切り貼りする独自の展開により、オッペンハイマーが戦前、戦中に関わった人物や物事が、戦後どう影響していくのかわかりやすかった。
日本では劇場公開にあたり物議をかもす本作であったが、実際に見てみると原爆に対してしっかり懸念を表現していることはよく伝わる。
そしてラスト、連鎖反応が原子爆弾の中では起きなかったものの現実の世界では核拡散という形で起き続きてしまうことに気づいたオッペンハイマーと、その現実を生きている我々というある意味バッドエンドの描写はいままでノーラン映画にはないものだった。