あおみどろ

オッペンハイマーのあおみどろのレビュー・感想・評価

オッペンハイマー(2023年製作の映画)
4.5
先に留意しておきたいのは、この映画は「反核の映画」ではなく「ロバート・オッペンハイマーの伝記映画」ってコト。故に日本人から見て少しウッとなってしまうシーンがあったとしても、それを今作の批判の理由にしてはならないし理由にすらならないことは心に留めておきたい。

世界で一番好きな監督がアカデミーを総ナメした作品………ってことで私の中での期待度がとんでもないぐらい跳ね上がっていたのだが、歴代のノーランの作品と比べかな〜〜〜り異質なのは一目瞭然。アクション、SFときて現実的かつシリアスな伝記映画ですからねぇ………終始張り詰めた空気感が漂う様は『ダンケルク』っぽいかも?

全編フィルム撮影ってことで絵がキマりすぎているのは勿論のこと、今作はとにかく音が凄い(『DUNE2』程ではないけれど)。服がビリビリと震え出すほどの大音量を浴びている時が一番「俺、今IMAXで観てるんだなぁ」と実感できた………けれど、他の人も仰ってる通りメインは会話劇なのでIMAX必須とまではいかないかも??

「我は死なり。世界の破壊者なり。」の言葉通り、世界の法則そのものを書き換えてしまった一人の男、オッペンハイマーの果てなき苦悩をキリアン・マーフィーはこうも鮮やかに演じてみせた。ミステリアスで、どこか哀愁漂うその表情………それにノーランの演出が加わってしまえば、そりゃとんでもない化学反応になるわな。

他にもマット・デイモンだったりフローレンス・ピューだったりと、キャストがめちゃくちゃ豪華で画面が色んな意味で忙しなかった印象………しかしやはり、最も存在感を放っていたのはロバート・ダウニーJr。トニー・スタークの印象が強い彼だけれど、それをキッパリ忘れさせられる程に圧が凄かった。

完全に期待通りの作品だった………とは言い難い映画だった(難解なのが主な理由)けれど、それでもノーラン節は十分に感じ取れたしアカデミー賞総ナメも納得の完成度だった。近い内、時間あったらもっかい観に行きたいかも。
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