ryoさんの映画レビュー・感想・評価 - 2ページ目

決闘高田の馬場(1952年製作の映画)

-

“活動”写真の面目躍如、傑作也。1930年代の日本に「映画」は確かにあった。
《鴛鴦歌合戦》でも見せた志村喬の喜劇俳優ぶり、走るシーンに始まり走るシーンをクライマックスとする映像としての正しさ(喜劇役
>>続きを読む

夜を走る(2021年製作の映画)

-

膿んだ日常から発露する悪意と新興宗教。実に90年代的なテーマだと思ったが、三十年で回帰してきている感もある。工場の画が印象的。

太陽を盗んだ男(1979年製作の映画)

-

傑作。主題が既に面白く、テーマについてだけでも幾らでも書けそうだけど、何より画面に観客を最後まで引っ張っていく迫力と面白さがある。

高校の理科教師(沢田研二)が天皇に直訴を企てるバスジャック犯(伊藤
>>続きを読む

恋の秋(1998年製作の映画)

-

vieillissement。ワイン農家、成熟。
例えば、ラスト、車内で並んで画面に並行に映り、駅で垂直に別れたマガリとジェラルドは、同じ部屋に舞い戻り、画面の手前と奥で重なり合うような位置関係で再会
>>続きを読む

他人の顔(1966年製作の映画)

-

得難い傑作。

繰り返し観たくなるイメージの宝庫。造り物の手、レントゲンの頭蓋骨。透過する診察室のイメージ(ウィトルウィルス)。岸田今日子のナース。カメラの転倒と関係の転倒。「化物」の群衆。武満徹の気
>>続きを読む

ベルファスト(2021年製作の映画)

-

冒頭の現代の風景のカラーから白黒の過去の通りへ移り、雑踏の中を移動する男の子を捉えた映像は実にウェルメイドで、上手に作らはったなあ、と若干意地悪な気持ちで観ていたんだけど、精巧に造られたつくりものめい>>続きを読む

人も歩けば(1960年製作の映画)

-

これもまた川島雄三による日本の喜劇人の映画。フランキー堺、加東大介、脱線トリオの絡みが観られるだけで有難い。個々のキャラクターにも味がある。フロイト先生の引用から夢オチの大ジャズ祭りなんか滅茶苦茶だが>>続きを読む

細雪 ささめゆき(1983年製作の映画)

-

邦画中の傑作。日本語、船場言葉でのコミュニケーションや間合いを基に「映画」を作ることが可能であるということ。陰翳礼讃。市川崑の空間。
石坂浩二の独特の色気もよかったが、とにかく四姉妹のそれぞれが嵌り役
>>続きを読む

MEMORIA メモリア(2021年製作の映画)

-

最初の轟音。彼女の音、そして観客にも聴こえる音。映画の音はどこにあるのか? この映画には映像に付けられた出所不明のBGMのようなものはない。また、彼女の轟音が観客に共有されるのに対して、作中で再現され>>続きを読む

砂の女(1964年製作の映画)

-

砂の底の女。The Woman in the Dunes。砂と肌(ヒロシマモナムール)。渇きと性。岸田今日子。中立地帯に囚われたものの時間性の変容。(併映は岡本喜八《ああ爆弾》だったらしい、いい時代で>>続きを読む

(1968年製作の映画)

-

モダニストがよってたかって拵えた京都の像。龍安寺、禅寺、桂離宮。パターンと光の表現。

ファミリー・ネスト(1977年製作の映画)

-

《ダムネーション》がいかにも映画的な構図を多用する作品だったので、《ファミリー・ネスト》が対象を追う記録的なカメラで少し驚いた。文体を確立する過程、とも言えるし、記録という出自を離れて純粋を目指すとい>>続きを読む

ダムネーション 天罰(1988年製作の映画)

-

文体は確立したが人の心を失う前のタルヴェーラ。冒頭から繰り返し現れるロープウェイが生の単調さと永劫回帰を示唆してはいるものの、まだ存在論的な境位に入る前で、社会的人間を、恋愛とその終わりを、優れた構図>>続きを読む

ニーチェの馬(2011年製作の映画)

-

A torinói ló。トリノの馬。轟々と、濛々と吹く風。裸形の生。一つの極点、この先には何もないという。『ゴドーを待ちながら』のような。
反復。滅びの前で生活はほぼ完全なルーティンと化し、生きるた
>>続きを読む

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(2021年製作の映画)

-

このレビューはネタバレを含みます

見終えてまずは、形式に憑かれた男ウェス・アンダーソンらしい映画、雑誌という枠組みを借りた、シュールでキュートでややブラックな語り口の、寓話めいたオムニバス、役者は豪華だし様々なこだわりと工夫は面白いけ>>続きを読む

パワー・オブ・ザ・ドッグ(2021年製作の映画)

-

西部劇かと思いきや心理劇かと思いきや…してやられた感

ライトモチーフ的に人物と結びついた音楽が秀逸、《ファントム・スレッド》と同じRadiohead、ジョニー・グリーンウッド。

tick, tick...BOOM!:チック、チック…ブーン!(2021年製作の映画)

-

“show must go on”、それは呪いでもあり祝福でもある。


ーーーーーーーーーー
JON (ON PHONE)
But what am I supposed to do now?

Ro
>>続きを読む

ブレグジット EU離脱(2019年製作の映画)

-

ドミニク・カミングス。Brexitの立役者。
「Take back control」というフレーズを軸にしたワンフレーズポリティクスや(「EUに週3億5千万ポンドの金を払うより国営医療サービスに」のフ
>>続きを読む

突然炎のごとく(1961年製作の映画)

-

古い喜劇、サイレント映画風に軽やかなテンポと音楽で味付けしてあるが(ストップモーションなど、映像の遊びがとても多い、この軽さは当時かなり新鮮だったんじゃないか)、おそらく最もフランス(文学)らしい感情>>続きを読む

MONK モンク(1968年製作の映画)

-

ピアノソロを弾くべきところで立ち上がって、その場で踊りながら回転するモンク。踊るように弾く、弾くように生きるモンクのシンプルな肖像。これはもう被写体の魅力だけで成り立っている作品と言っていい。
煙草を
>>続きを読む