りっくさんの映画レビュー・感想・評価 - 84ページ目

アミスタッド(1997年製作の映画)

4.2

言葉も通じず、互いにいがみ合っていた人間たちが、法律上の言語ではなく、あるひとりの人間の「物語」によって心を動かされ、それが国の歴史をも動かす力強い一作。あくまでも個人の尊厳や力強さを見つめ、それに応>>続きを読む

A.I.(2001年製作の映画)

2.8

ディズニーのピノキオでは、人形の少年が体験する人間社会の欲望と悪意が容赦ない恐怖を伴って描かれていたが、本作でデイヴィッドが目撃するそれもまた圧倒的な陰鬱さによって印象付けられる。まさに人間の欲望の道>>続きを読む

E.T. 20周年アニバーサリー特別版(2002年製作の映画)

4.3

自転車に乗った子供がETに誘われ、地上を離れ大空へと駆け上っていく。ジョン・ウィリアムズのテーマ曲がフルで鳴り響く中で、月や夕日をバックに彼らのシルエットが浮かび上がる。そんな美しい光景に立ち会える権>>続きを読む

タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密(2011年製作の映画)

2.9

洒落たオープニングから始まる本作は、冒頭からスピルバーグの『タンタン愛』を感じ取ることができる。オープニングのシークエンスで、作り手は決してタンタンの顔を映そうとしない。似顔絵を描いてもらっているタン>>続きを読む

戦火の馬(2011年製作の映画)

4.2

個人的に映画と最も相性がいい動物は「馬」だと思う。風になびくたてがみ、荒々しい息遣い、凛とした佇まい。走る度に蹄からは心地よい音が鳴り響き、黒々とした瞳は強さや弱さが同居している。スクリーンの中心に>>続きを読む

ブリッジ・オブ・スパイ(2015年製作の映画)

4.2

1人の男の揺るぎない信念が、自国や相手国、互いの国のスパイ、自らの家族、そして通勤途中の市井の人々の心を動かしていく終盤の静かな畳み掛け演出はさすがスピルバーグ。

いくらでもサスペンスフルにできる場
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BFG:ビッグ・フレンドリー・ジャイアント(2016年製作の映画)

1.5

スピルバーグが童心に帰ったような一作。孤児、父親のような存在など要所にスピルバーグらしいテーマが散りばめられ80年代に手がけたファンタジー映画を彷彿とさせる匂いと、巨人から逃げ惑う少女の描写はジュラシ>>続きを読む

ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書(2017年製作の映画)

5.0

間違いなく近年のスピルバーグ作品の中でベストだろう。見応えたっぷりのエンターテイメント性と、各々の立場で苦悩葛藤し決断を下す骨太で真っ直ぐなメッセージ性の両輪が終始スピードを落とすことなくフル回転する>>続きを読む

レディ・プレイヤー1(2018年製作の映画)

4.3

かつて「ジュラシックパーク」と「シンドラーのリスト」という相反する傑作を同時期に制作し、映画作家としての驚くべき幅を見せつけたスピルバーグ。それから20年以上たったいま、「ペンタゴンペーパーズ」と本作>>続きを読む

長いお別れ(2019年製作の映画)

3.0

山崎努演じる父親が認知症になった数年間と、その家族の葛藤と成長を描いた本作は、難病もの特有の湿っぽさを「モリのいる場所」を髣髴とさせる山崎努のチャーミングさで乗り切ってはいるものの、特に前半は認知症の>>続きを読む

轢き逃げ -最高の最悪な日-(2019年製作の映画)

3.0

結婚式という人生最大の幸せを翌日に控えた新郎とその親友が交通事故と轢き逃げにより奈落の底に落とされ、さらにそこから物語を反転させることにより、各々の感情の揺らぎを掬い取ろうという意思を強く感じる水谷豊>>続きを読む

天使のはらわた 赤い教室(1979年製作の映画)

4.8

フィルム内で出会ってしまった運命の女。
それが演技なのか、はたまた襲われたのかも含め、虚実入り混じったミステリアスな女の幻想を負う男。
そんな女を唯一救える瞬間を逃し、男は地獄めぐりをする。
そこで出
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ラブホテル(1985年製作の映画)

4.2

壁に止まっているハエ➡︎窓から飛び降りそうになる男➡︎羽音からの男がハエをつぶすワンカット

バイブ差し込まれて体が痙攣するワンカット

映像の強度と村木と名美の繊細な物語が合致し唯一無二の世界になっ
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天使のはらわた 赤い眩暈(1988年製作の映画)

4.0

傷ついた女と、転落した男。
二人の男女が交通事故をきっかけに人生が交錯する。
病室やマンションの一室、車内や廃墟といった密室空間の作り方が石井隆は本当に上手い。その現実離れした空間に男女がいるだけで、
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ヌードの夜(1993年製作の映画)

4.3

ネオン、雨、場末、廃墟、蛍光。
一つ一つの要素が石井隆の世界を形成
フィクショナルな世界ではない
業によって没落していく女
堕ちたところで男と出会いもがく
鮮血のシャワー室
随所で効くクロ
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夜がまた来る(1994年製作の映画)

3.8

夫を殺された女の地獄巡り。
復讐心を燃えたぎらせながら、ひたすら堕ちていく。
そして堕ちきったからこそ、そこから這い上がった女は、神々しささえ醸し出す。
そこに辿り着いたからこそ見えてくる世界。
これ
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GONIN(1995年製作の映画)

5.0

もう何も言うことはない。美しく儚く哀しい愛と暴力の世界。バッティングセンターの場面から編集がキレッキレ。五人が一人ずつ殺される場面もまた痺れる見せ方。小道具の使い方も巧み。

タイに逃げる直前で捕まり
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フィギュアなあなた(2013年製作の映画)

4.3

前半は登場人物たちの愛すべきダメっぷりと、佐々木心音の浮世離れ感が同居し面白いことに。
特に柄本佑はモテキの森山未來に通ずる素晴らしい演技!
冒頭の編集社会議の場面から惹きつけられる。
確かに理不尽な
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GONIN サーガ(2015年製作の映画)

3.3

冒頭は「GONIN」の映像を挟み込みながら、あの抗争で否応ながらも傷や恨みといった運命を背負ってしまったネクストジェネレーションのお話を強調する。

だが、そもそもこれだけ「GONIN」と関連付けてお
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天使のはらわた 赤い淫画(1981年製作の映画)

4.3

池田敏春ならではのエログロ含め「天使のはらわた」シリーズでは異色の一作。
官能的・恍惚的といった要素は減じている一方、奈美を追う村木の狂気性・変態性、さらにはもはや「汁」としか表現できないような生々し
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人魚伝説(1984年製作の映画)

5.0

夫を殺された海女の復讐譚。
そして反原発大量殺人作品。
幻想的な世界の中で燃え上がる女の怨念。
凄まじい映画というのは本作のようなものを指すのだろう。

物語の構造自体はありふれたもの。
だが、映画と
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鍵 THE KEY(1997年製作の映画)

4.1

叙情詩的・官能的で繊細かつ色彩豊かな世界の中で、対極になりそうな要素であるエログロを暴走させ、ケレン味たっぷりの演出をぶちこみ、映画的カタルシスも生み出してしまう。そんな世界を構築できるのは、池田敏春>>続きを読む