りっくさんの映画レビュー・感想・評価 - 88ページ目

叫びとささやき(1972年製作の映画)

3.9

同じお腹から産まれた姉妹なのに、何故こんなにも反発してしまうのか。冒頭の霧のかかった屋外シーンから全編にわたって漂う閉塞感と息苦しさ。彼女たちがいる赤い部屋は、まるで母親の子宮のようにも見えてくる。>>続きを読む

仮面/ペルソナ(1967年製作の映画)

4.2

冒頭から女性たちの顔が完璧なアングル、サイズで連ねられる至福の時間。そこにまるでホラー演出のような呼吸で意表を突いたショットを挟み込み脈を乱すスリリングな映画であり、それが単なるイメージ映像の羅列では>>続きを読む

天才作家の妻 -40年目の真実-(2017年製作の映画)

4.0

ティムバートンの「ビッグアイズ」に似ている話であるものの、本作はグレンクローズの繊細な演技を柱に、派手ではないが台詞回しや回想場面のタイミング等々、隅々まで気配りが行き届いている丁寧な演出によって、ま>>続きを読む

ベルベット・バズソー: 血塗られたギャラリー​(2019年製作の映画)

3.2

呪われた画によって、それに関わる人間が次々と不審死を遂げるオカルトホラー調な一作だが、そこにダンギルロイは絵画という大金が動く割に、価値や金額は絶対化されない脆く危い世界の中で蠢く胡散臭さの塊のような>>続きを読む

ポーラー 狙われた暗殺者(2019年製作の映画)

3.5

一匹狼の殺し屋が想いを寄せてしまった女を救ったために身を滅ぼすという誰もが好きな話を、ネット配信の強みを生かした、セックスとバイオレンス描写をギャグすれすれにまで炸裂させて色付けしたエクストリームな劇>>続きを読む

愛がなんだ(2018年製作の映画)

4.5

今泉監督作品ならではの単なるラブストーリーを超えた、もっと人間の本質的な部分をまさぐり掴もうとする傑作。原作の力も借りてか、今泉監督作品では珍しく直接的な肉体関係を描いており、また
過去作と比較しても
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十二人の死にたい子どもたち(2019年製作の映画)

2.5

一言でいうとそれぞれ事情を背負った自殺志願者が集ったグループセラピーにミステリー要素を足しただけの映画。思わせぶりな謎解きとそれぞれの登場人物の過去が台詞で説明されていく。ただし12人それぞれにきちん>>続きを読む

FYRE: 夢に終わった史上最高のパーティー(2019年製作の映画)

4.5

広告代理店的な発想とアイデアで大風呂敷と理想だけで突っ走る危険性。誇大広告やハッタリが後に自らの首を絞め、それを隠蔽し絵にかいたような失敗を果たす滑稽さ。カリスマ性のあるボスに何も言えずに暴走を許して>>続きを読む

フォルトゥナの瞳(2019年製作の映画)

2.5

このレビューはネタバレを含みます

相手の運命が見えるフォルトゥナの瞳を持った神木隆之介が、携帯ショップの店員である有村に告白するまでのくだりは、気恥ずかしいくらいの展開。だが実は、両親を亡くした飛行機事故で助けられなかったと思っていた>>続きを読む

21世紀の女の子(2018年製作の映画)

3.7

ジェンダーやセクシャリティーの揺らぎをテーマにそれぞれの筆跡筆圧で各章を綴られたオムニバスは、ラストに母なる存在と化した教祖の山戸監督がまとめ上げ、聖典が完成する印象さえも受ける。

作品を貫くテーマ
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眠る村(2019年製作の映画)

3.0

毒ぶどう酒事件の現場に降り立ち、村人たちにも取材はしているものの、真犯人を徹底究明するような内容でもなく、犯人とされた奥西さんの墓が共同墓地に移されたというエピソードはあるものの、村全体の暗部を過度に>>続きを読む

七つの会議(2018年製作の映画)

4.5

山一証券に代表されるように、日本の会社の体質にメスを入れ、そこにドロドロと流れるどす黒い血を浴びながら、縦割り行政、お上への忖度、隠蔽と左遷、責任転嫁を繰り返す平成日本の空気感を、適度にカリカチュアし>>続きを読む

愛唄 ―約束のナクヒト―(2019年製作の映画)

1.5

ヒロインを演じた清原果耶が闘病中の役柄を熱演しているからこそ、同じく余命限られているはずの主人公演じる横浜流星の説得力がない。外見上もいたって健康に見え、普通に外出しているので、具合が悪くなって倒れる>>続きを読む

マスカレード・ホテル(2019年製作の映画)

2.8

「アイズ・ワイド・シャット」風の音楽が鳴り響き、豪華絢爛げな雰囲気を醸し出しているものの、ホテルの客は仮面を被っていて素性を明かさず自由を謳歌しているというテーマと物語がリンクせず、ラストの仮面舞踏会>>続きを読む

夜明け(2019年製作の映画)

3.3

是枝裕和、西川美和作品に携わり、満を持してデビューを果たした分福所属の広瀬監督の手腕は、確かに柳楽優弥にオーバーアクトをさせず、彼が演じる主人公の心の機微に寄り添うような丁寧な脚本が光っている。特に自>>続きを読む

ミスター・ガラス(2019年製作の映画)

3.5

「アンブレイカブル」「スプリット」のクロスオーバー作品として、シャマランユニバースを形成した本作は、悲しき過去を背負った三人の男たちの病院からの脱走と対決、志半ばでの破滅を描いているものの、そのスケー>>続きを読む

サスペリア(2018年製作の映画)

4.5

舞踏と儀式、芸術と魔術。そんな表裏一体の渾然とした世界で絶え間なく観客を挑発し続けるまぎれもない傑作。健康的な女性たちが、圧倒的に不健康な牢獄で、中高年女性たちに見つめられながら、身体をくねらせ、飛び>>続きを読む

デイアンドナイト(2019年製作の映画)

3.8

自動車部品の不具合を告発した下請け企業の社員の声が握り潰され自殺した事件を機に、その息子が復讐を企てるという始まりは、まるで池井戸潤のようなである。

だが、本作はそこから正義を掲げながらも決して理想
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闇の歯車(2019年製作の映画)

3.0

行きつけの酒亭に集まる4人の男が、謎の男から、さる商家に眠る700両を盗むという悪巧みを持ちかけられるところから始まる。そこから、彼らの人生の歯車が、彼らを取り巻く女性たちをも巻き込み、静かに狂い始め>>続きを読む

クリード 炎の宿敵(2018年製作の映画)

3.9

シリーズが長年続いているからこそ、息子の代まで受け継がれた宿命、因縁、悲劇に厚みと重みが生まれる。特に本作は、スタローンとラングレンの老いてもなお貫禄と哀愁たっぷりの肉体によって、それがより強固になっ>>続きを読む

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