nt708さんの映画レビュー・感想・評価 - 7ページ目

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女の座(1962年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

同じ監督の映画を20本近く観てみるとさすがに飽きが来そうなものだが、成瀬の映画はなかなかそうならない。脚本家も同じであることから他作品との類似性は見て取れるのだが、それぞれの作品にはそれぞれの良さがあ>>続きを読む

人生模様(1952年製作の映画)

4.3

このレビューはネタバレを含みます

面白い!どの物語もハッとさせられる結末で実に洒落ている。それでいて機智に富んでいるから観ていて飽きることが無く、全ての作品を観終えた後にもまた続きが観たくなるような中毒性を持つ。

個人的にはやはり『
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スウィング・キッズ(2018年製作の映画)

4.4

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同じ民族、同じ人間にもかかわらず、イデオロギーのために殺し合うことがいかに馬鹿げていることか、、それも国を守るためという名目のもと一部の権力者の暴走によって割を食うのは民間人という構図は今も昔も変わら>>続きを読む

ドリームプラン(2021年製作の映画)

4.2

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これは間違いなく本年のアカデミー賞作品賞の本命ではないだろうか。2010年を皮切りに自分らしく生きることの重要性を描く作品が数多く生み出され、2015年を超えると自分らしく生きることの難しさを描く作品>>続きを読む

ナイル殺人事件(2022年製作の映画)

3.5

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かれこれ2年ほど公開を待っただろうか。それだけに私の中での期待値があまりにも上がってしまい、本作の満足度は想像以下だった。

アガサ・クリスティに対して私が持つ印象と言えば、表向きは上品ながらも雰囲気
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赤坂の姉妹 夜の肌(1960年製作の映画)

4.2

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2回目の観賞だが、本当に上手いの一言。時空間の見せ方、とても勉強になる。チェーホフの『三人姉妹』を取り入れることによって、作品がよりわかりやすく、かつその深みが増してくる。ラストショットで冬子が見据え>>続きを読む

ラブ・アゲイン(2011年製作の映画)

4.0

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いちいち演出をカッコつけていて、笑ってしまった(もちろん誉め言葉である)。最初こそ男性の心の穴を埋める存在として女性を描いている点、女性は○○な男性に弱いといったステレオタイプを明言してしまう点に違和>>続きを読む

(1990年製作の映画)

3.5

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久しぶりの黒澤明。どの作品も物語としては今ひとつなのだが、自分が見た(かもしれない)夢を映画にできてしまうことに、黒澤の凄さを感じる(これは素直な意味でもあるし、皮肉の意味でもある)。

今ひとつな物
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きみに読む物語(2004年製作の映画)

4.2

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「ラブロマンス映画」と検索すれば必ずヒットする本作は『ロミオとジュリエット』の設定を現代劇に昇華した王道の恋物語だった。身分の異なる男女の禁断の恋。『ロミオとジュリエット』がロミオ、つまり男性の視点か>>続きを読む

ショーシャンクの空に(1994年製作の映画)

4.2

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こういう映画を観ると改めて映画が総合芸術であることを認識させられる。映像・音楽・演技など、あらゆるエッセンスが化学反応を起こしてひとつの作品となる。どのエッセンスのどの調合方法が欠けても作りえないもの>>続きを読む

イヴの総て(1950年製作の映画)

4.0

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合わせ鏡に無名のフィービーが映るラストショット。これが本作の総てだろう。表では仮面を被って謙虚に愛想よく振舞っているが、裏では野心に燃え自分がのし上がるためには手段をも選ばない冷淡さを持っている。自分>>続きを読む

ドリームランド(2019年製作の映画)

4.1

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なぜこんなに評価が低いのかわからないほど、面白い映画。映画館で公開していた時期に観るかどうか悩んでいたことを今更ながら後悔している。

本作で最も賞賛されるべきはその演出だろう。全編、主人公の妹の語り
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晩菊(1954年製作の映画)

3.5

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成瀬映画のしっとり感とさらさら感の絶妙なバランスが好きな私にとって本作は鑑賞後の印象がしっとりしすぎているように感じた、、というより、話が些か老成しすぎていると言った方が良いだろうか。とにかく成瀬映画>>続きを読む

秀子の車掌さん(1941年製作の映画)

3.9

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終戦前の成瀬映画を初めて観た。

ボロボロの靴、生々しい金銭のやり取り、売れない雑貨店、、庶民の生活を描き続ける成瀬映画の片鱗がこのころからうかがえる。

本作で初めて成瀬とタッグを高峰秀子はまだどこ
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彼女来来(2021年製作の映画)

3.8

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同一人物が別人に入れ替わっている物語は、『ジキルとハイド」のような個人に複数の人格が備わっているパターンとある視点から見たときに全くの別人が同一人物のように見えるパターンに分けられると思うのだが、本作>>続きを読む

稲妻(1952年製作の映画)

4.2

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成瀬巳喜男・高峰秀子・林芙美子・田中澄江のタッグはやはり最強。映画を観てきて初めて凄い映画に出会ったと思ったのが『放浪記』で、そのタッグがもう一度観られるとなれば、その機会を逃すわけにはいかない(まあ>>続きを読む

驟雨(1956年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

戯曲が原作と言うだけあって会話がなかなか面白い。物語もとてもよく整理されていて、かつ面白く、とても複数の戯曲がもとになっているとは思えない。さすが水木洋子。脚本家としての実力の高さを強く感じる。

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遠い雲(1955年製作の映画)

4.1

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木下映画の好きなところと嫌いなところが混在していた印象。話の慎ましさは私の好みからすればドンピシャなのだが、演出は奇をてらったものが多く慎ましい物語に水を差すようなシーンも多く観られたように思う。>>続きを読む

間違えられた男(1956年製作の映画)

3.6

このレビューはネタバレを含みます

本作も名作中の名作なのだろうが、真犯人を探すことに重きが置かれていない点で、今まで観てきたヒッチコック作品とは趣が異なる。本作は実話をもとに冤罪によって逮捕された男性とその家族の人生が壊れていく様を描>>続きを読む

今日もまたかくてありなん(1959年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

やはり私はこっち側の木下映画が好きだと思いながら、あまりに救いようの無い悲劇についつい閉口してしまう。しかし、戦後の世の中はこんなものなのだと納得している自分もいる。特に庶民にとってヤクザは必要悪であ>>続きを読む

フレンチ・ディスパッチ ザ・リバティ、カンザス・イヴニング・サン別冊(2021年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

こういう映画を観ると良い意味で映画ってなんでもありなんだと感じさせられる。有って無いような物語。モノクロにカラーに実写にアニメーションに、、自由すぎる映像表現。第一、本作の全編が一冊の雑誌というアイデ>>続きを読む

声もなく(2020年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

10歳前後の少女が誘拐されながらも、誘拐犯と少しずつ心を通わせていく様子。本当に心が通ったと思える瞬間で、誘拐犯が警察の手に渡り、現実に引き戻される展開。これらは『万引き家族』や『流浪の月』を思い出さ>>続きを読む

クレッシェンド 音楽の架け橋(2019年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

本作は対立するアラブ人とユダヤ人の若者がオーケストラを結成し、「平和」を生み出すきっかけを生み出そうと奮闘する物語。この対立は学校で勉強したり、日頃のニュースで聞いたりする程度の知識しかないが、それで>>続きを読む

さがす(2022年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

確かにエンタメとしては面白いのだが、何か心に残るかと言われると率直に言って疑問だ。慎ましくさりげない日常の中に生まれるドラマを描いた作品が私にとってはなおさらである。しかし、それは好みの問題に過ぎない>>続きを読む

サイコ(1960年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

シナリオの指南書、映画演出の指南書、名作選、、映画を作る側からも観る側からも必ずと言って良いほど名前を聞く本作。その存在を知りながらもこれまでどこか敷居の高さを感じて敬遠してきたが、思い切って観ること>>続きを読む

二人で歩いた幾春秋(1962年製作の映画)

4.2

このレビューはネタバレを含みます

どうも木下恵介の映画は苦手だ。特に喜劇をやろうとすると嫌らしさが気になって作品に集中できない。しかし、『二十四の瞳』をはじめ本作のような人間ドラマをやらせるとなかなか良い作品を作るようである。無理して>>続きを読む

喜劇 初詣列車(1968年製作の映画)

4.1

このレビューはネタバレを含みます

寅さんの礎ここにあり。マドンナとの恋愛、マドンナの肉親捜し、虚勢を張って生きている肉親、、のちの『男はつらいよ』で幾度となく登場する設定が本作には詰まっている。

本作を制作したのは東映だが東映に喜劇
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パラード(1974年製作の映画)

3.8

このレビューはネタバレを含みます

私の幼少期を改めて振り返ってみると、エンターテインメントへの憧れはサーカスにあるのだと思い出される。朧気ながら両親に手を引かれ、毎月のようにサーカスに連れていかれては、自分の想像をはるかに超えたパフォ>>続きを読む

グレート・インディアン・キッチン(2021年製作の映画)

2.5

このレビューはネタバレを含みます

本作をジェンダーの視点から見ようするとレビューを残すのが非常に難しい。このような現実がインドにもあるのだろう、、

と理解はするのだが、その原因がどこにあるのかはインドの社会構造があまりにも複雑である
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コーダ あいのうた(2021年製作の映画)

4.4

このレビューはネタバレを含みます

下ネタのセンスとピン送りの違和感を除けば、本当に素晴らしい映画だ。主人公の聾唖の家族を支えなければならない現実と音楽の勉強をしたいと言う夢のぶつかり合い。主人公の夢を応援したい一方で、彼女無しでは生き>>続きを読む

スティルウォーター(2021年製作の映画)

3.9

このレビューはネタバレを含みます

面白かったのは確かなのだがどこか物足りない。幸せの絶頂から転落していく様とそこから希望のある未来へと向かっていく展開に前半の重厚ながらも疾走感のある作りとの乖離を感じたのが原因だろう。

前半は親子関
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喜劇 団体列車(1967年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

「喜劇・列車」シリーズを一通り観てみようと思い、前作に続き鑑賞。前回よりも列車という閉鎖的な空間で繰り広げられるドラマや主人公・山川が鉄道会社に勤めているという設定はあまり生かし切れていなかった。一方>>続きを読む

ボーイ(2010年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

親にとっての親の理想像と子どもにとっての子どもの理想像というのは往々にして異なるものである。ボーイは長らく父親と離れていた故に、自ら理想の父親像を作り上げ、過去も理想のものに書き換えていた。一方の父親>>続きを読む

テイクオーバーゾーン(2019年製作の映画)

3.7

このレビューはネタバレを含みます

タイトルがタイトルなだけあって『そして、バトンは渡された』と頭の中でリンクする部分があったが、誰から誰へバトンが渡されたかが明示されていない本作はそのように関連付けるのも正しくないように感じる。

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喜劇 急行列車(1967年製作の映画)

4.0

このレビューはネタバレを含みます

祖父、父とが鉄道会社に勤めていたこともあって、本作のような鉄道モノの映画を観ると小さい頃の記憶が蘇り、なんだか涙が出てきてしまう。思わぬタイミングで父が車掌を務める列車に乗ったとき、いつもと違う様子の>>続きを読む