春とヒコーキ土岡哲朗

ポーラー・エクスプレスの春とヒコーキ土岡哲朗のネタバレレビュー・内容・結末

ポーラー・エクスプレス(2004年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

信じるための旅路。
 
信じたいのが本音なら列車に乗れ。
テーマは、サンタを信じることについて。クリスマスを通して感謝や愛を描く話ではなく、信じるという行為に焦点を当てた話。
主人公の少年は、大きくなり始めて、サンタはいないのではないかと疑い始めている年齢。そんな少年の前に北極へ向かう列車が現れる。サンタがいるのであれば、これに乗れば会いに行ける。でも、いないかもしれない。そこで少年は乗るのをためらうが、列車が自分を置いて走り出すと、急いで追いかけ、飛び乗る。やはり、信じていたいのだ。疑い始めてるけど、元々はサンタにいてほしいと思っているから、いる可能性にかける。サンタに限らず何事も、可能性がないと思って落胆するより、可能性があると信じてみればいい。あろうとなかろうと、信じなければ手に入れられる確率は0だから。

一緒に走る同士がいるから気づく。
主人公は、やっぱり信じたいという気持ちを捨てきれず列車に乗り、車内でサンタを信じる他の子供たちに感化され自分のロマンを思い出す。そして、自分と同じく列車に乗るのをためらった男の子のために、列車を緊急停止する。自分を諦めかけたからその子の気持ちが分かる主人公。証拠、実現にたどり着いていない状態で信じ続けるのは大変で、諦めたくなるその子に共感する。だから、信じられないことを責めるつもりはない。現実にいるかいないかではなく、サンタがいる世界がいいという自分の心に従え。主人公は男の子にそう感じて、列車を緊急停止させて彼を乗せた。自身の乗車、他の子供との出会い、男の子を乗車させる、という一連の流れで、主人公が次第に自分の願望を自覚していく。願望が自覚できれば、目標に向かう準備ができる。

約束されていないゴールに向かって。
主人公は、列車の屋根の上でのスキー、氷の上でスリップなどピンチに遭遇。ゴールに行くまではサンタがいるかどうか分からないが、分からない段階でたくさんのピンチを迎えなければいけない。それはモチベーションを保つにはあまりに険しい。でも、ちゃんと北極にはサンタがいて、それを乗り越えた先で報われるよ、と言っている映画。そこでもらった鈴は、サンタを信じていないと音が聴こえない。主人公は、口に出して「信じる」と覚悟を決めて言ったとき、聴こえるようになった。信じるには覚悟がいる。信じない方が傷つかなくて楽だから、信じると傷づくリスクを背負うことになる。でも、自分に夢を見せてあげるために、信じる方を選んだ。信じる覚悟を決めた者には、信じた方向が正しい証拠の音色が聴こえる。自分の目指した道で成功できるかは分からないが、信じれば、その道は目指すだけの価値があるものだと実証できる。大人になっても鈴の音が聴こえる人間であることが、1つの成功。