このレビューはネタバレを含みます
SFだけど、心を攻めてくるサスペンス。
サムは3年間の孤独な仕事の任期をようやく終えようとしていたが、不穏な空気が流れ出す。現れたのは、事故現場から出てきたもう一人の自分。どちらも右手を火傷中という、本物の証。後から出てきたサムにとっては、観客が最初から見てきたサムが不審者という見え方の違いが面白い。
いがみ合ってどつき合いもした二人だが、クローンの生産は社の陰謀だということに気付き、二人で暴こうと団結。
発見した映像は、地球に帰還することになったのを喜ぶ複数の自分の姿が。最初から登場していたサムもクローンだったと分かる。さらにもう一人クローンの自分を犠牲にする作戦に出た2人。2人はハイタッチする。自分が大事、でも相手も自分だから気にかける。ただ、犠牲にしようとしている三人目も自分だよね……という、複雑な気持ちになる状況。
しかし、瀕死の怪我を負った方(二人目)が、自己犠牲を申し出る。その意志を汲み、地球に帰還する準備をしていく一人目。そして、「三人目が目を覚ましちゃう!」、「救助隊が来ちゃう!」というピンチが一気にくる。
どうにか地球に向けて発進した一人目を、犠牲になって見届ける二人目。下衆な会社の陰謀に立ち向かった二人。帰還した一人目は、会社を告発した。
最初は「地球に帰れない」のが怖いポイントだったけど、途中から自分が“増える”ことによりアイデンティティーが減る、という話にシフトしていった。「アイデンティティーのデフレ」。
