パイルD3

新しき世界のパイルD3のレビュー・感想・評価

新しき世界(2013年製作の映画)
4.5
「貴公子」で相変わらずのパワーを見せつけたパク•フンジョン監督が超一流のストーリーテラーとして、ややマンネリ気味だった韓国ノワールに新たなスタイルへの起爆剤を投じた「新しき世界」。

とても暗黒権力の抗争を描く作品とは思えないシンプル過ぎるタイトルですが、原題を直訳すると“新世界“で、これには2つの意味があることが後々わかります。

一流キャストを揃えて悪党どものタクティクスゲームが展開して、エキサイティングな韓流ノワールの凄味を見せつけてくれます。

「インファナル•アフェア」や「フェイク」「ゴッドファーザー」「パルプ•フィクション」をはじめ、マーティン•スコセッシのマフィアもの、イタリアの悪徳警察映画などいくつかのクライムムービーへのリスペクトが見られる演出もあり、警察組織も絡んだヤクザの権力闘争という一本の太い筋を通す中に、語り口の妙とセリフの面白さが吹き込まれていて、最後までいろいろ楽しませてくれる傑作です


【新しき世界】

いつものように一言で言えば、巨大な犯罪組織の幹部(ファン•ジョンミン)と、舎弟分の主人公(イ•ジョンジェ)が、跡目争いの渦中で、組織壊滅を目論む警察の捜査班を率いるリーダー(チェ•ミンシク)の策謀に巻き込まれていく話。

すぐに明らかになるが、主人公にはもうひとつの顔があり、これが最後までドラマに重要な深味を与えている。

犯罪組織は暑苦しい男社会ながら、多彩な登場人物の群像劇と共に、ストーリーのスピーディーな展開にはグイグイ引っ張られる。
しかも予測不能なひねりがあるのは、この監督の脚本ならではの魅力的な仕掛けでもある

基本はシリアスタッチのバイオレンスムービーであり、容赦なく殺生に及ぶロクでもない奴らのドラマなのに、ふと漂う感傷や気概のあり方にはいちいち胸奥がやられてしまう。

裏切りとか友情という使い古された言い回しでは語り尽くせない部分を、フンジョン監督は映像で描き切って見せる。

「貴公子」の主人公と、ここでファン•ジョンミンの演じた組織の幹部にはいくつかの共通点があり、監督の人物造形の巧妙さの一部が見えて一段とファン度数がアップした。

ジョンミンが主人公相手に口にする
“風呂に入って映画でも観に行こうぜ“
というセリフ、
この後に続くセリフのやり取りがイイ
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