やー、すごい。先が読めない。事態がどんどん加速度的にイヤぁな方向に走っていき、気づいたら思いも寄らぬ地平に連れていかれていた。
コーエン兄弟やポンジュノを思わせるダークコメディ。
「エヴリシングエヴリウェア〜」にも通じるアジア系移民2世の葛藤を描きつつ、普遍的な軋轢とその和解の可能性に関しての物語。こちらもA24。
イデオロギーや社会階層の違いがあれど、その根本の満ち足りなさや心の空白は皆同じ。その事にお互い気づく事が出来れば……しかし世の中そうは上手くいかない。なんとも言えないやり切れなさ。
アリ・ウォンのスタンダップコメディがめちゃくちゃ好きで大ファン。夫婦生活を大胆にジョークにしていた「魔性の女になりたくて」が昨年配信されていたけど、その後離婚されたそうで…その経験が多分に脚本に盛り込まれていると考えると更に強烈。
一方のスティーブ・ユアンも少年時代アメリカ生活に馴染めず、キリスト教コミュニティに救われた体験がダニーの人物に反映されているそうだ。2人とも素晴らしかった。
エイミーとダニーの同世代感なんだろうけど、90年代オルタナ中心のサントラがやはり他人事ではなく、沁みる。
確かに、あの時代の行き止まりの寂寥感。あの頃に青春時代を過ごした私たちの世代はそれを今も何処か引き摺っている様に思う。心に刺さった棘がチクチクと痛む感覚。
1.4.5とシリーズのエピソードを監督しているのは「37セカンズ」のHikari監督。
畳み掛ける様なテンポの良さとユーモラス且つ鋭い人物描写。このままA24で映画撮れちゃうんじゃないかなー
