柏エシディシ

レッスン in ケミストリーの柏エシディシのレビュー・感想・評価

レッスン in ケミストリー(2023年製作のドラマ)
3.0
これは良作。
「笑わない女」として不当に批判されたりしたブリー・ラーソンの鮮やかな回答。
女性やマイノリティへの抑圧の強かった50年代アメリカを舞台に、何だったら今の時代にも根強い問題(特に極東の私たちの国には他人事ではない)を"科学"と"料理"という一見縁遠いと思いがちな二項を軸に考え直す。
科学的などと言うと冷徹な印象を持ちがちだが、真に理知的な思考と判断を備えれば、社会でまかり通る理不尽や無知が以下に"非合理"であることは明らかなこと。
また、そこに「料理」という"女性の役割"と額面に収まれがちな視点を絡ませたのがこの物語を更に面白く奥深くしており、食事が果たす「人を育てる」「人を楽しませる」「人と人を繋げる」という真価を改めて浮き彫りにしていく。
序盤の驚愕の展開と、その後の思わぬ"語り手"の視点で進行するエピソードなど、ストーリーテリングも捻りがあって面白かった。
ブリー・ラーソンの強さも弱さも相応に備え且つチャーミングな演技も素晴らしい。
いかんせんエピソード数が短く少ない。
どうやらこのままだと1シーズン限りのリミテッドになりそうで、まだまだ掘り下げきれていないテーマを残し後半は豊富なキャラクターたちを持て余し気味で性急に畳み掛けている印象なのが惜しい。
映画Hidden figuresやドラマ「マーベラスMrsメイゼル」とセットで、是非観て欲しい、見逃すには惜しい佳作だ。
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