よう

すべての見えない光のようのレビュー・感想・評価

すべての見えない光(2023年製作のドラマ)
2.5
ピューリッツァー賞の原作小説を映像化したもの。
未読だけど原作小説の評判は聞いていたので、期待しての鑑賞。
今月ネトフリに再入会したきっかけとなった作品の1つめ。2つめは来週配信開始。


主人公が男女で2人いて、女性側の主人公を演じたのがアリア・ミア・ロベルティ。
この人、実際に視覚に障害を持つ方。つまりは当事者キャスティング。演技が初なのかな?
とある記事に、「学者、女優、人権活動家」とあったので多方面で活躍してる人ではあるっぽい。

調べてないから実年齢がわからないけど、劇中で「少女」と呼ばれるぐらいの容姿をしている。
さらには、台詞にもあるように「瞳が美しい」
彼女が作品の中心にいることの良さは確実にある。

実際は見えてるのに見えてない演技を見せる作品だと、「この人は見えませんよー」っていうのをアピールするかのような描写を何度もやってくる作品が多いのだけど、この作品はそれをやる必要がないので、本当にフラットに見せてくる。
むしろ、「見えてないけど人並み以上にこれぐらいのことはわかります」って描写のほうを多くやってる感じすらある。

トータルで、彼女における描写については好感を持つ。


全体的な話としては、戦時中のボーイミーツガールもの。
戦争とロマンス的なものを絡める作品って自分は好みではないとはいえ、対立国間の若者どうしが1つのラジオ放送を通じて出会うのかどうかってところは、素直にいい話かと思った。そこもファンタジックではあるけどね。

ただ、ナチス将校の一人がとある宝石に執着してるという要素は、フィクショナリー度が高くて、なんか浮いた印象がしてしまう。
あの宝石にまつわる迷信そのものが、なんか取ってつけた感じ。インディージョーンズで出てきそうな話だから。

あと、細かいところをつつくようだけど、男性主人公側のヴェルナーはやや英雄的すぎるかなあ。
戦場で若い兵士があんな冷静でいられるのかってのは気になる。
その上、物語途中で大胆な行動にも出る。バレたら軍法会議どころの騒ぎではないようなことをするのよ。
まあ、このぐらいのことはどっちかつったらありだと思ってるんだけどね。


話そのものとは少し離れるけども、やっぱこれは原作がアメリカ小説で、アメリカのドラマ化作品だよなあっていうのをわかりやすくやってる。

ドイツ側は主人公以外はほとんど、とにかく嫌なキャラクターとして見せてくる。けっこうしつこいぐらい。
〈ナチス悪〉なのはわかるけど、やり過ぎというかすごい単純化してるようにも見えるし、前述した主人公のヒーロー性が対比として効き過ぎてることにもなっている。
主人公以外のドイツ側だと、学校で「逃げろ」って言ってくれる子と、ヴェルナーの才能に惚れ込んだ教官だけは酷い感じには見せてない。そこだけ。

あと、米軍バンザイ描写もね。
これなんて、ガッツリ話に絡ませてある。
戦場から離れても傷は抱えてる話をせっかくやってんのに、能天気にああいうハッピー描写やっちゃってる。

そして、やっぱ気になるのは、全員英語。アメリカの作品だから当然とも言えるかもしれないけど、ほとんどがフランスとドイツの登場人物なのに全員英語。
こういうの、最近自分は妙に引っかかるようになってしまっている。
小説だと気にならないかもしれないけど、生身の人間が演じてる実写だからなんか違和感を覚える。
「この朗読ってフランス語ってことなんだよね?」
「ロンドンからパリへ電波を……ってことは英語?」
「ドイツ人どうしの会話なんだから、これはドイツ語だな」
「初めて出逢ったこの2人は何語で喋ってるの?」
っていちいちワンクッション疑問、もしくは補完が挟まれるのよ。
作品として残念とまではいかないけど、なんかむず痒い感じがある。


第一話に、去年ネトフリで配信された『西部戦線異状なし』の主人公役のフェリックス・カマーラーが出てる。
『西部戦線異状なし』といえば、ドイツ原作小説をかつてはアメリカで映画化して、去年ドイツ語で新しく作られたもの。
その主人公役の人でさえ、ドイツ兵役にもかかわらず、このドラマでは英語。
なにこのねじれ。
なんかいろいろ『西部戦線異状なし』と比較してしまうことにもなった。

障害者キャスティングやっておきながら、全員英語っていう昔ながらの作り方でやってるもんだから、今作られた作品ってのが薄まってる感じはする。


期待しすぎた。
よう

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