柏エシディシ

チェルノブイリの柏エシディシのレビュー・感想・評価

チェルノブイリ(2019年製作のドラマ)
5.0
観なければと思いながら、題材が題材なだけに、なかなか観る覚悟が決まらず。
絶賛配信中のThe Last of Usのクレイグ・メイジンがクリエイターということで意を決して、遂に、観た。
なんて恐ろしいドラマ。
ソヴィエトが舞台のドラマで人物が英語で喋っている。お馴染みの顔の俳優達もいる。これは創作なんだ、撮影されたものなんだと自分に言い聞かせなければ、とても観ていられないリアリティに、息苦しく動悸も高まっていく。これは危険なドラマだ。
しかしこれは、多少の脚色があるとはいえ事実にあった事だし、ある意味今も"続いている"ことだという事が更に恐ろしい。
向こう何百年、何千年経とうとも永続的に影響を与える傷跡を地球上に残した愚かな人間の大罪。
決して他人事ではない。2011年。福島第一原子力発電所の状態を固唾を飲んで見守っていた時の生きている心地がしない感覚。私たちはあの時の事を忘れてしまっていないだろうか。
今の私たちの国の政府や中央関係者は、このドラマで描かれたソヴィエトのそれと、如何程の違いがあるだろうか。
「起き得ぬことを悩む必要はない」という台詞の重み。
恐ろしいドラマだったが観なければならなかった。観て良かった。
レガソフを演じたジャレッド・ハリスが素晴らしかった。ステラン・スカルスガルドとの関係性がウェットになり過ぎないこのドラマの中でも一縷の灯し火の様に光る。
スカルスガルドとエミリー・ワトソンの共演は「奇跡の海」以来か。このツーショットは感じ入るものがある。
ジェシー・バックリー、バリー・コーガンも流石の存在感。今面白い俳優のうち実力派の2人が傍にいる贅沢。

しかし改めて、水蒸気爆発を防ぐために決死の作業を行った3人の志願兵や、被曝の危険を顧みず裸で作業した炭坑夫たちなど、歴史の影に隠された人々には心から敬服せざるを得ない。
ロシアが認めているチェルノブイリの犠牲者の数には、絶句する。
信じられない様な愚かな行為をしたとしても、そこから何かを学び繰り返さない事。
知らないでは済まされない事がこの世界にはある。
本作は特別なドラマシリーズだ。必見。
柏エシディシ

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