コマミー

胸騒ぎのコマミーのレビュー・感想・評価

胸騒ぎ(2022年製作の映画)
3.8
【抗えない大人】




あー、イライラした…。

とてつもない"胸糞映画"だった。

本作はスザンネ・ビア監督の「アフター・ウェディング」にも出ていた俳優:"クリスチャン・タフドルップ"の初監督作品だ。そして本作はブラム・ハウス製作でハリウッドリメイクもされており、今年の9月に全米公開される。

"娘"と共にイタリアで休暇中の"デンマーク人夫婦"が、現地で意気投合した"オランダ人夫婦"とその"息子"の家に招かれ、そこで「おもてなし」をされるのだが、次第に"居心地の悪さ"を覚え始めると言う物語である。
監督が旅先で経験した"気まずい出来事"を、ホラー映画として昇華させたものらしく、まずは監督の発想の転換に感服してしまった。

しかしながら、なぜ北欧はこんなにも胸糞映画を製造できるのか日々驚かされるのだが、本作もその一つに加えられるのだろう…実際本作はとんでもない胸糞映画だったし、かなり"現実的"にも見えた。
なぜ現実的に見えたかと言うと、オランダ人夫婦のあの"態度の変わり様"は、何だか映画の中の事とは思えない様な気がしたからだ。"善人に見えて実は悪人"というか…デンマーク人夫婦のあの人の"見せかけの善意を前に何も言えない"状況というか…特に夫の"ビャアン"にそれが表れるのだが、何だか日本人の異常なまでの礼儀正しさと似ている気がして、「こうして搾取が始まっていくのだな」と恐怖とビャアンの大人しさへのイライラと共に危機感を感じてしまった。

人の善意の裏にある悪意、そして人が時に出てしまう"詰めの甘さ"故に起こってしまう"最悪な展開"に、イライラの反面、とてつもなく落ち込んでしまった。現実でも起こりそうな災禍な故、余計にそれを感じざるを得なかった。

もう一度言うが、"搾取までの構造"を目にしている様な気がしたからだ。

優しさにつけ込まれてしまう詰めの甘さ…デンマーク人夫婦のこの出来事は日本人は他人事にして良いのだろうか?

表情からして展開が読めてしまうホラー映画ではあるのだが、逆にこれがラストの雰囲気を掴める結果となり、胸糞映画としてちゃんと機能していた。
ちなみにリメイク版には、ジェームズ・マカヴォイが出ているのだが、ビャアン役の"モルテン・ブリアン"の顔がめちゃくちゃ似ていて驚いた。リメイクするにあたってこれはチョイスしやすかった点ではないだろうか?

リメイク版も見てみたいが、自分は「これっきり。もう見たくない」映画として記録されました。
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