Takashi

ノック 終末の訪問者のTakashiのネタバレレビュー・内容・結末

ノック 終末の訪問者(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

私はかなり面白かったです。
ただ、それは私が黙示録の話をよく知らなかったからなのかもしれません。

「世界を救うために誰か死んでくれ」という話が出たとき、これは功利主義をテーマにした話なのだなと理解しました。

津波がきたあたりまでは「単なる偶然なんじゃないの?」と思っていましたが、航空機がボトボトと墜落するようになって「ああ、4人が言っていることは本当だという設定なのね」と思いました。

結局4人は全員死んで、ゲイカップルも一人が犠牲になった結果、世界が救われたわけですが、私としては「功利主義の究極を描いて、功利主義の考え方の危うさを描いて見せた」と私は理解しました。だから、私としては、この映画はとても面白かった。

映画を観終わった後、BLACK HOLEを観て、この映画は黙示録を題材にしているということを知りました。
私は黙示録の内容を知らなかったので、「4人であること」「7回であること」「イナゴ」の意味にも全く気づきませんでした。このバッタは何かを象徴してるんだろうなあとは思いましたが。
黙示録など全く頭になく観たので、この映画が「神に犠牲を差し出したおかげで世界が救われた。一人の犠牲が皆を救ったのだ!」という物語であると私は全く理解しませんでした。
私は、功利主義ってひどい面があるだろ?ということを描いた作品だと思ったのでその意味では人間の尊厳を描いたのだと思いました。しかし、この映画を宗教や信仰と理解した場合には全く逆の理解になるのかもしれませんね。つまり、全体のためなら1人くらい死んでもいいだろうと、ずいぶん違う理解になりえるのだと思います。

犠牲として選ばれたのがゲイカップルだという点については、映画の中で「すごく幸せな君たちが選ばれたのだ」といったセリフがあったので、私は「世界の中ですごく幸せな家族」がゲイカップルの家族だったのだと理解しました。だから、ゲイカップルに対してもある程度好意的な扱いをしているのだと思いました。
しかし、この点については、「ゲイカップルの一人を殺すことで世界を救ううとはなんということだ!」という批判があるようですね。私は、この作品を観て、そういう風にはとらえませんでしたが、そういう理解の仕方も確かにあるかもしれません。

ショットが結構好きでした。クローズアップを多用したり、画面の余白を作ったり、作品としてはとても面白かったですね。

あまりはっきり説明している映画ではないので、受け止め方が色々ある映画ではないか?と思いました。
どんでん返しをストーリーでバーンとみせる作品より、語りすぎないというか、余白を残して考えさせてくれるような本作のような作品は結構好きです。
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