NaokiAburatani

インフィニティ・プールのNaokiAburataniのレビュー・感想・評価

インフィニティ・プール(2023年製作の映画)
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久々に醜悪なものを観た気分。

金があれば全てが許されて、自らの命すら好き勝手出来る‥これが資本主義の成れの果てなのだろうか。

多くの人が自分は特別であると思いたいものかもしれない。ただ、異常なことを特別だと決して勘違いしてはいけない。倫理観の欠如など以ての外だし、それではただの獣だ。

この世の楽園だと思えたリゾート地は、銃・麻薬・性・そしてクローン技術により其の実地獄となっていた。生命を弄ぶ技術が完成すれば決してこの映画がフィクションだと一笑することは出来なくなるかもしれない。
あれだけ乱れた金持ち連中も帰国の途では何事もなかったかのように日常に戻って行ったことがその示唆であるように思える。
劇中登場した仮面と素顔が完全に逆転していた印象。

解釈の仕方はいくらでもあるだろうが、ジェームズは自分を殺したことで再誕ではなく退行したように思う。残ったのは、生物としての本能だけ。一度は否定し拒否するも、結局自分で考えることを放棄したものの末路は日常へ回帰出来ないものとなっていた。幻覚の中で中身のない自分を目の当たりにしたが、実際に割ってみれば、ただの人間でしかなかった。3度も自分を殺してようやくそのことに気付いたのだから哀れとしか言いようがない。

最後に、この映画の教訓として「外国に行く際はその国のことを勉強して行こう!」ということだけは肝に命じたい。
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