NaokiAburatani

人間の境界のNaokiAburataniのレビュー・感想・評価

人間の境界(2023年製作の映画)
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マリウポリの20日間の前日譚的な話にも思えた。演出意図は正直分からないが、全編モノクロの映像でなければ、辛い内容に自分は2時間半耐えられなかったかもしれない。

島国である日本に生きていると地続きの他国との国境について普段考えることなんてまずないが、また一つ映画から気付きを与えてもらえた。それと同時にこんな悲惨なことに気づかなかった自分がいかに平和を享受できているか、ということも考えてしまう。

どうやったら難民兵器なんていう発想が出て来るのだろうか。まるでボール遊びをしているかのようにベラルーシとポーランドをいったり来たりさせられる難民を観て何とも思えなくなってしまうのは嫌だ。だからと言って精神科医に車を貸すことを断った友人を非難することも出来ないジレンマがある。
国境警備に従事している末端隊員および警察が劇中のように一括りではないことを祈るしかない。
劇中明言されていたハイブリッド戦争の行き着く先が怖い。

劇中の主要な登場人物たちは皆がただ幸せに、更に言うなら普通に暮らしたいだけだったはずなんだが‥民族、宗教、政治、土地が生む軋轢が無くなる未来が見えない。唯一、難民少年3人がポーランド家族に匿われ、子供同士でラップを口ずさむシーンだけが希望のあるシーンだった。果たして現実はどうか‥

エピローグにおけるポーランドのウクライナ難民受け入れが人だけではなく、犬や鳥もすんなり進んでいるのを観ると最後の最後で何とも言えない気分になった。
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